小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
経済評論家の勝間和代さん (c)朝日新聞社
経済評論家の勝間和代さん (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】増原裕子さんと交際宣言した勝間和代さん

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 増原裕子さんと勝間和代さんの交際宣言。バイセクシュアルであることを明かした勝間さんは、自分のカミングアウトが誰かの力になればと語りました。レズビアンであることを公表し、生き生きと活動している増原さんやその仲間たちの姿を見て、自分もそうありたいと思った勝間さん。

 今この記事を読んでいる人の中にも、そんな彼女の言葉に励まされた人がいるでしょう。

 キャリア的に成功し、高い信頼を得ている上に大きな発言力を持つ勝間さんのような女性が自らのセクシュアリティーを明かしたことは、女性の同性カップルのイメージを変えるだろうと期待する声があります。

 でも勝間さんが述べているように、ゆくゆくは自分の性的指向を人に明かさなくてもいい世の中になることが理想ですよね。

 性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)と性自認(ジェンダー・アイデンティティー)を表すSOGIという言葉があります。私の場合は、ヘテロセクシュアル、シスジェンダー。つまり異性愛者で、女性の身体で生まれ、自分を女性だと思っているのですが、それをわざわざ人に説明する機会はありません。たいていの人は私を見て「この人は女性で、男性を好きになるのだろう」と思うから。

 漫画家の倉田真由美さんは、勝間さんにこれまでなんども「彼氏できた?」などと尋ねたことを後悔していると語りました。それを聞いてハッとしました。私も周囲の人に、相手が当然異性愛者だろうという前提で話しかけていないだろうか。親しい間柄であるほど、相手のことをよく知っていると思いがちです。

 だけど密かに悩んでいる人も、言わないと決めている人もいるはずです。何しろ日本の性的少数者は13人に1人、つまり左利きやAB型の人と同じくらいの割合で存在するのですから。

「ひとりじゃないよ」という勝間さんのメッセージは、当事者に寄り添うだけでなく、みんなに対する「あなたのそばにも誰かがいるよ」でもあるのですね。

AERA 2018年6月11日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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