「中国やロシアは開発に積極的だが、それでは環境問題に十分配慮できているのかというところで、日本は環境色を強く出し、科学的な貢献を通じて存在感を高めることができる。日本の強みを生かして影響力を行使することはできると思う」

と海洋政策研究所海洋政策チームの本田悠介研究員。北極域の環境をウォッチしてきた技術や実績がある日本が、バランスの取れた開発に影響力を発揮していけば、中韓にはできない日本の存在感につながると強調した。

「北極の未来に関する研究会」が1月25日に日本政府に提出した報告書では、北極圏への積極関与について、次のように呼びかけている。

「北極における意思決定やルール策定への積極的な関与を含め、蓄積してきた科学的知見や観測技術に基づき、北極圏及び非北極圏諸国との二国間及び多国間での対話・協力関係を発展させつつ、北極域の持続可能な利用に対して積極的に貢献することが求められている」

 温暖化の進行でますます海氷がなくなっていくと、船の航行はさらに容易となり、砕氷船の同行も必要でなくなる可能性がある。航行船舶が増えれば、事故も起きるし、油濁汚染も起きる。北極の温暖化が全世界に及ぼす影響が極めて大きいことからも、開発と環境保全の両輪を回すことができる日本の知見や技術に、北極海沿岸国からも大きな期待が寄せられている。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年4月23日号より抜粋