なぜこれほど増えたのか。

 背景には05年に施行された発達障害者支援法がある。発達障害は、このときに脳機能の障害として定義づけられ、乳幼児期からの早期発見や医療・福祉・教育面での支援体制も段階的に整えられてきた。

 その結果、公立小中学校で通級指導を受ける発達障害の児童生徒数は06年度に6900人ほどだったのが16年度には6.9倍の4万7千人超に増えた(文部科学省調べ)。12年の調査では公立小中学校児童の6.5%に発達障害の可能性があるとも推計されていて、今後も学生に占める割合は増えると見られている。

 発達障害がありながら進学してきた学生たちにとって、大きな課題が就職だ。冒頭の男性が就活で苦労したように、卒業後の進路状況は厳しい。JASSOの調査では、15年度卒業の全学生の就職率が74.8%なのに対し、発達障害の学生は35.9%とかなり低い。しかし、低いながらも年々、就職率は上昇している。背景にあるのは、学内外で障害に合わせた就活・就労支援を受けている学生が増加していることだ。

 5年前に発達障害学生向けの就活支援事業を始めた企業Kaien(東京都新宿区)では、10人ほどだった登録者が今では200人を超えた。鈴木慶太代表が説明する。

「幼少期から支援を受け、そのまま障害者枠で就職し、合理的配慮を受けた方がいいと考える親子も増えています」

●自分の特性把握し、イラストレーターの夢

「障害者枠」とは、誰もが応募できる「一般枠」と異なり、障害者手帳を持っている人たちだけが応募できる求人枠だ。企業は障害者枠で採用した従業員に対し、働く上で不都合を感じないよう、適切な範囲で本人が要望する「合理的配慮」をすべきだとされている。一方で、一般枠よりも職種が限られ、給与なども低いことが多い。

 障害者雇用促進法は、事業主に対し、従業員の規模に合わせて一定数の障害者を雇う義務を課しているが、今春、民間企業の法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられた。身体障害のある求職者が減少していることもあり、企業は将来を見越して、発達障害者の採用に力を入れ始めているという。

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