当初は障害の種類や程度に応じ、どのような能力があるか、生産ラインをどう工夫すればうまく作業できるか、という知恵があまりなかった。グループ全体でも、障害者に作ってもらう部品を真剣に洗い出すことの重要性も共有されていなかったという。

 それでも受け入れる障害の種類は徐々に広げていった。98年に聴覚障害者を雇い、手話による対応を始めた。00年からは知的障害者を雇用。02年からは精神障害者の実習を受け入れ、06年からは雇用を始めた。

 一方できめ細かく対応策も見直した。新しく働き始めた人には日誌をつけてもらう。身体障害者の場合、日誌のやりとりはほぼ半年で終わるが、精神障害者の場合は1、2年のやりとりを続ける。日々の健康状態を把握し、時短勤務や休ませる必要があるためだ。澁谷社長は「健常者の新入社員に『困ったことがあったら話してね』と言うように、障害者の場合は合理的な配慮として、長い間様子を丁寧に観察しながらコミュニケーションをとるのは当然です」と話す。

 今ではサンライズで働く138人の障害者のうち精神障害者は3分の1にまで増加。現場の運営もすべて障害者に任せ、中には部長や課長に昇進した人もいる。ダイキン向けの部品を生産している取引先の中で「品質はトップクラス」だという。

 この4月から民間企業の障害者の法定雇用率は0.2ポイント上がり、2.2%になったが、ダイキングループ全体で今年4月には2.3%になる見込みで、すでにクリアしそう。増設工事が進むサンライズでは、23年には障害者雇用数を約70人増やして210人とする予定で、グループ全体でも同年に2.8%という高い目標を掲げる。今後の引き上げにも「あまり心配はしていない」(人事本部担当者)という。

 4月にはダイキン本体に7人の障害者が総合職の正社員として入社し、うち2人は精神障害者だ。障害の内容や程度によって、「配慮・周知が必要」「配慮必要、周知不要」「配慮必要、周知範囲は要検討」などときめ細かく対応策も定めた。長年障害者雇用に取り組んできただけに、引き上げも冷静に受け止めている。

 東にも熱心に取り組み続ける企業がある。宅配大手、ヤマトホールディングスだ。

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