「水玉模様を命がけで描いた」原画展で辿る「くらもちふさこ×いくえみ綾」の軌跡 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「水玉模様を命がけで描いた」原画展で辿る「くらもちふさこ×いくえみ綾」の軌跡

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矢内裕子AERA
会場には二人がイラストを仕上げるまでの様子を映した映像も。机の上には実際に使っている道具、横の壁には完成した原画も飾られている(撮影/横関一浩)

会場には二人がイラストを仕上げるまでの様子を映した映像も。机の上には実際に使っている道具、横の壁には完成した原画も飾られている(撮影/横関一浩)

 くらもちふさこといくえみ綾、人気マンガ家二人の原画展「くらもちふさこ×いくえみ綾 二人展“あたしの好きな人”へ」が東京・池袋のパルコミュージアムで開催中だ。二人による原画展は珍しい試みだが、注目すべきはそれだけではない。ライター・矢内裕子氏がレポートする。

*  *  *
 この原画展が注目される理由はもうひとつある。実は、これほどの人気作家ながら、二人とも過去に原画展を開いたことがなかったからだ。

「自分の原画はお見せするようなものではないと、ずっと思っていました。私はコマごとに切って仕上げて、最後に貼り合わせていた時期もあったし、ホワイト修正が多くて有名なんですよ。印刷して、綺麗になっているけれど。他のマンガ家さんの原画を拝見すると、『原稿ってこんなに綺麗なものなのか』と、びっくりするんです。今回はいくえみさんが誘ってくださって、それならやってみようかという気持ちになりました」(くらもちさん)

 原画には、制作過程の秘密が隠されている。

「いろいろな方の原画を拝見していると、せっかく描いた人物をまるごと消していたり、みなさん、少しでも作品をよくしようとしている苦労のあとが見えます」(同)

 読者が目にする作品は、色みやサイズが調整され「本」というフォーマットに落とし込まれたもの。原画には、筆圧や色の使い方、塗り方、細かい指示書き、編集担当とのやりとりのメモなど、その一枚の中に多くの物語が込められているのだ。

「描き手の並々ならぬ熱量や生々しさは、原画でなければ感じ取れません。今はデジタルが主流ですので、アナログ原稿が残っているキャリアの長い作家さんはとても貴重な存在なのです」(本展覧会のプロデューサー・重藤瑠衣さん=パルコ)

 展示からは技法の変遷も見て取れる。くらもちさん自身も発見があったそうだ。

「昔は作品と描いている自分との距離が近く、主観的だったとすれば、今はフィルターを1枚挟んで描いているというか、客観的になりました。技術的には、昔は労力を惜しまなかった。『おしゃべり階段』の水玉のワンピースや『いつもポケットにショパン』の細かいチェックのワンピースとか、細かい模様を命がけで描き込んでいました(笑)。私はホワイトを修正のために使っているのですが、今回、いくえみさんの原画を見たら、修正ではなく効果のために使われているんですよ! 二人の違いもよくわかると思います」


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