今は小学生と中学生、あわせて13人が民宿を改装した寮で共同生活を送る。村の人口は370人。そのうち、島の小中学生は、島留学の子どもも入れて27人。村の人口は減少し続けているが、留学してきた子どもたちやその寮の管理人、学校の先生など、島留学に関わる若い世代が村に入ってくる。この試みが功を奏し、村は、内閣府の「まち・ひと・しごと創生本部」が発表した「移住・定住施策の好事例集(第1弾)」で紹介された18自治体のうち、10年から15年の社会増(行政・民間の取り組みによって転入者数から転出者数を差し引いた社会増減数を始点年の総人口で割った「社会増減率」)が6.69%とトップとなった。

 卒業後の交流も生まれ始めた。初年度に島に来た中学3年生が20歳になるので島で成人式を祝おうと計画が持ち上がる。卒業生が戻ってきて、村の漁業に携わるという事例も出てきた。

 留学生の親が行事で訪ねてくれるので観光でも村が潤う。来年からはできれば里親制度も始めたいという。里親には村から費用が支払われるので、経済の内部循環が生まれると考えるからだ。

「5年後、島の産業を支えた人たちが高齢になって働けなくなった時に、次世代がどう産業を支えていくのかが、まさに今直面していることです」

(編集部・野村昌二、柳堀栄子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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