国連での活動をテーマに歌を詠む、知花さん(※写真はイメージ)
国連での活動をテーマに歌を詠む、知花さん(※写真はイメージ)

 2017年に歌人の登竜門と言われる角川短歌賞で佳作を受賞した知花くららさん。今年1月には、短歌の入門書『あなたと短歌』を発売した。そんな知花さんは今、国連での活動をテーマに歌を詠む。その胸中とは?

 少しずつ短歌を発表するうちに、現代短歌を代表する歌人であり、細胞生物学者でもある永田和宏さんが出演する番組「NHK短歌」のゲストに招かれるなどして交流が生まれ、それが「週刊朝日」での短歌連載にもつながった。

 連載には知花さんの新作短歌も掲載されるため、毎月、30首近く作っては永田さんに提出して講評をもらった。自己流では理解しきれなかった部分がクリアになり、短歌の腕を一段も二段も上げる機会となった。同時に知花さん独自のテーマも見えてきた。ずっと取り組んできた国連WFP(国連世界食糧計画)の活動を歌に詠むことを、永田さんから強く勧められたのだ。

 知花さんは07年に国連WFPのオフィシャルサポーターに就任。干ばつに見舞われたアフリカ・ザンビアの農村、台風被害で家を失ったフィリピン人たちのキャンプ、タンザニアの貧困地域の学校など、飢餓に苦しむ世界の最貧困地帯を数多く訪問して、その現状を多くの人に伝える活動をしてきた。その功績が認められて13年には国連WFP日本大使に就任。しかし、国連の歌を詠むのは難しい。

「目にする光景を問題意識でもって伝えようとすると全然歌にできない。まず収まらないし、収めたところで歌としてはつまらないんです。それこそ揺れている気持ちをどう織り込んでいくのか……」 

 国連WFPでの揺れる気持ちとは?と尋ねてみた。

「目の前にミルクを買うお金もないお母さんがいて、やせ細った赤ちゃんを抱いている。お母さんから話を聞く私はホテルで朝ご飯を食べてきている。そんな自分が恥ずかしいわけです。だからといって目の前のお母さんにお金をあげても飢餓の根本的な解決にはならない。じゃあどうしたらいいの? 支援ってなんなんだ、みたいな。大使として活動している私の中にも、自分に対する批判的な目が常にどこかにあります。そんな迷いを大使として発言することはできないけど、短歌の中では吐露すべきなんですよね。葛藤する自分、大使の面を脱いだ本音に向き合わないといけない。でもすごく難しい」

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