小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
分断と格差が深まるだけでは悲しすぎる(写真:鈴木芳果)
分断と格差が深まるだけでは悲しすぎる(写真:鈴木芳果)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

*  *  *

 あれから孤独について、ずっと考えています。イギリスの「孤独担当大臣」のニュースを知ってからです。

 男性週刊誌でも大きな見出しで取り上げられ、日本でも関心を持つ人は少なくないのだなあと思いました。

 イギリスの孤独を減らす政策の提唱者であり、2016年に極右勢力の凶弾に倒れたジョー・コックス議員は「若くても高齢でも、孤独は人を差別しない」という言葉を残しています。孤独は1日15本のタバコを吸うのと同じくらい健康に悪影響があるというデータも。イギリスのボランティア団体の調査では、男性は38歳の時が最も友人が少ないということですから、高齢者のみならず誰も例外ではないのです。

 日本でも無縁社会という言葉が登場して久しく、今は高齢者以外でも孤独死を他人事ではないと感じている人は多いでしょう。実は私も、東京で出稼ぎ中に突然死した時のことをよく考えます。夫と子どもは海外だし、頻繁に連絡を取る親戚や友人もいません。多分、仕事に現れないのを不審に思ったマネジャーが異変に気づくのだと思いますが、それも申し訳ないなあ、という寄る辺ない気持ちです。

 一口に孤独といっても、身寄りがない人や、育児や介護やいじめや貧困や障害や病に悩む人など、いろいろです。

 日本の社会保障制度は、支援が必要な人を家族で支えることを前提にしていましたが、老いも若きも単身世帯が増え、人口が減り続ける社会でその前提は成り立ちません。それぞれが自分の不安で手一杯です。そして孤独だからこそ、分断は深まるばかり。

 唯一残された道は「私もあなたもひとりぼっち。こんな社会はつらすぎる」という合意のもとで、いたわりあいを可能にする仕組みづくりを進めることでしょうか。格差は埋まらず孤独だけは行き渡る世の中なんて悲しすぎますが、それを照らす希望を探すことを諦めずにいたいです。

AERA 2018年2月19日号

著者プロフィールを見る
小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

小島慶子の記事一覧はこちら