A:全国の自治体には熱意をもって町おこしに取り組まれている方が必ずいます。でも、上司が地方議会の顔色ばかりうかがうような人だと、その熱意も無駄になってしまいます。やはり、自治体にも強力なリーダーシップを発揮できる職員が必要ですよね。その点、非常にうまくやっているなぁと感じたのが、野古道で知られる世界遺産を有する和歌山県田辺市。ここの田辺市熊野ツーリズムビューローという観光団体にはカナダ人の職員がいるんです。この方は熊野古道の自然や歴史に魅せられて、田辺市に住みついた元外国語教師で、地元の魅力も外国人旅行者が求めることもわかる。もともと地元の旅館には「外国人お断り」というところも少なくなかったのに、地道に説得して回って温泉施設などに英語の解説を用意し、自らインバウンド旅行者向けの観光ツアーなどを考案して、観光客数を伸ばすことに成功したんです。

B:確かにリーダーシップを発揮できる自治体職員は不可欠ですね。ただ、私は自治体に問題があるとは考えていません。むしろ、制度とそれを自分の都合のいいように利用しようと考える人たちに問題がある。なぜなら、地方創生交付金を使った自治体主導の地域活性化は必ず限界が来るからです。最終的に民間にバトンタッチしないと、継続的な地域経済の成長は望めません。99%の事業者が中小・零細企業であることはご存じでしょう。数にして約380万社です。でも、その82%が地方の企業であることを知っている人は少ない。さらに、大企業が近年業績を伸ばしているのに対して、中小・零細企業は建設業以外、年々業績が悪化しています。この地方の中小・零細企業の活性化なくして、地方経済の成長はありえないんです。なのに、地方企業に落ちる交付金を半ば食い潰してトンズラする輩もいる。名前は伏せておきますが、助成金を利用してあるPR企業にPR誌の作製を依頼した中小企業が私のクライアントにいるんです。自治体は単年度決算なので、年度内に納品があった分についてのみ、助成金を支払うじゃないですか? でも、この業界では期日までに完成品を納品できないことも少なくありません。そのときは、“とりあえずのモノ”を納品して助成金を受けとり、そのあとでブラッシュアップしましょうと口約束を結ぶ。ところが、これをやると、「助成金はもうもらったから」とその後のフォローを半ば放棄してしまう会社もあるんです……。

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