竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

竹増貞信「イノベーションは一人一人の行動から」(※写真はイメージ)竹増貞信「イノベーションは一人一人の行動から」(※写真はイメージ)
「コンビニ百里の道をゆく」は、40代のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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「イノベーション」すなわち「革新」。経済学者のヨゼフ・シュンペーターによれば、「イノベーションによる創造的破壊こそが資本主義経済の本質」です。

 ですから、「イノベーションを起こす」と言うと大変なことになるわけですが、私は「プチイノベーション」を日々心がけることが大切だと思っています。自ら行動を起こして目の前の仕事を変えていくことも、立派なイノベーションです。

 上司に言われたことをやっていれば対価が支払われる、という時代は終わりました。社員が健全なモチベーションを持ち続けられる会社でないと、存続は難しい。それぞれの社員の中に自由と責任が共存し、仕事のやり方を「変えてもいい」という風土がつくられることが不可欠。このことが、イノベーションを生みやすい組織づくりにつながります。

 会社全体や各セクションの進むべき方向を示すことはトップの役目ですが、現場で何をどうするかという具体的なことは一人一人に考えてほしい。細かい指示を出したくなっても、会社の将来を考えてグッとがまん、ということはよくあります。結果、プチイノベーションが社内のあちこちで生まれ始めています。

 例えば、全国各地の店舗がその現場。入社1年目は店舗勤務ですが、そこには新人ならではの気づきが必ずある。「厨房弁当の容器の名前をわかりやすくしたい」「サラダチキンはフックにかけたほうがきれいに陳列できる」などの指摘が「正しい方向」だと思ったら、すぐに改善。そして、新人の声を導き出した店長、店舗指導員でもあるスーパーバイザーをほめる。

 そうすることで「仕事のやり方は変えてもいい」という意識が醸成され、将来、彼らが幹部になった時もその意識が引き継がれて、現場が本当に変わっていきます。

 小さいことの連鎖、積み重ねですが、ときにそれが社会をも変える「イノベーション」につながると思っています。

AERA 2018年2月19日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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