「以前は存在しなかった。まったく新しいアプローチですね」(同)
新しいアプローチはクリエイティブに限った話ではない。
「サステナビリティー(持続可能性)」をビジネスの中核に据え、新たな素材の開発にも力を注ぐ。クモの糸のDNAを使った「生地」やキノコの細胞を使った「革」。シリコンバレーのスタートアップと組んで、そんなプロジェクトも進めている。
「将来的に革やコットンが使えなくなったとしたら、それに代わる新たな素材は果たしてあるのだろうか。長い目で見て考え、見つける努力を続けることが大切だと思う」
近年、サステナビリティーを掲げる企業は多いが、
「取ってつけたようなものではカルチャーとして浸透しない」
とピノー会長。自分たちはどんな企業なのか。何をやろうとしているのか。そこに齟齬(そご)が生じてはいけない、と。
07年に「環境」をグループ全体のミッションの一つとして掲げてから昨年で10年。グッチは毛皮使用の廃止を自分たちから申し出たという。
最後に「日本市場ならではの傾向」について尋ねると、
「ほかの国々では女性のほうが前衛的なファッションを好むものですが、日本では男性のほうが、服装でチャレンジしようとしているように見えます」
ちょっと意外。
「日本は秩序立った国。こうした国では、『型にハマったものではないもので自己表現したい』という気持ちが男女ともにあるのかもしれません」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2018年2月12日号