フランソワ=アンリ・ピノー/1962年生まれ。父親の後を継ぎ、2005年にコングロマリットであるPPRの会長兼CEOに就任。同社をラグジュアリーとスポーツ&ライフスタイルに特化したグループに方向転換した。13年ケリングに社名変更(撮影/篠塚ようこ)
フランソワ=アンリ・ピノー/1962年生まれ。父親の後を継ぎ、2005年にコングロマリットであるPPRの会長兼CEOに就任。同社をラグジュアリーとスポーツ&ライフスタイルに特化したグループに方向転換した。13年ケリングに社名変更(撮影/篠塚ようこ)

 若者の「高級品離れ」が言われるようになって久しい。そんな中、ケリング傘下のブランドが「ミレニアル世代」の売り上げを伸ばしているという。グループを率いる会長がインタビューに応じた。

 ケリングは、フランスに本拠を置くグローバル・ラグジュアリー・グループ。LVMH、リシュモンと並ぶファッション業界の大企業だ。グッチにサンローラン、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタからステラ・マッカートニー、プーマまで、20の世界的ブランドを持つ。

 日本では若者の高級品離れが叫ばれて久しいけれど、実際はどうなのか。そんな問いを、フランソワ=アンリ・ピノー会長兼CEO(55)に投げかけた。

「グッチやサンローラン、バレンシアガといったブランドでは、売り上げの30~40%をミレニアル世代が占めている。ブランドによっては、その数字は50%にも上るんですよ」

 ミレニアル世代は1980年代半ばから2000年代初頭の間に生まれた、デジタルネイティブな若者たちを指す言葉だ。

「確かに、若い世代は従来のアプローチだけでは反応しなくなっています。これまでは、ブランドの歴史や職人技といったものを前面に出してきたわけですが、それだけでは足りない。歴史や職人技は大前提で、大切なのは“感情に語りかける”ということなのです」(ピノー会長)

 ピノー会長が挙げた具体例は二つ。一つは、サンローランやバレンシアガで試みた「ストリートウェアをラグジュアリーブランドとして再構築する」というやり方だ。若い世代の気持ちを刺激し、大きく動かすことに成功したという。

 そしてもう一つは、グッチで試みた「新しい世界観を生み、喜びや楽しさを消費者と共有する」というやり方だ。

 16年にグッチが発表したコレクション「グッチゴースト」は、ミレニアル世代が好む「ライブ感」や「双方向性」といったものから生まれた。クリエイティブディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ氏(45)は、グッチのアイコンである「GGロゴ」を模したグラフィティーをインスタグラム上で発表していたアーティストにSNSを通じてコンタクトし、コラボレーションを持ちかけた。このコラボが、世界中で多くの若者の心をつかんだ。

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