「気象庁が重点観測している火山は、過去100年程度の火山活動などを目安に選定しています。確かに本白根山は、非常に静穏な状況を続けてきました。そういった火山も常時観測の対象に加えるのは予算面からも困難です。ただ、小規模噴火も含む噴火履歴調査を徹底し、より詳細な噴火年代や規模、周期を公表し、関係機関に活用してもらうのは有意義だと思います」

 11年の東日本大震災以降、日本列島が火山の活動期に入ったと考える研究者は少なくない。

 国立研究開発法人防災科学技術研究所の棚田俊収(としかず)・火山防災研究部門長も、活火山の未知のリスクに警鐘を鳴らす。

「例えば富士山も、山頂部から噴火するとは限りません」

 富士山は過去に1合目から山頂の間でも溶岩流出が確認されている。富士山のハザードマップは、山頂を含むかなり広範囲な場所で噴火した場合を想定して作成されているが、完璧とは断言できない、と棚田氏は言う。

「あくまで一定の『想定』を基にハザードマップは作成している以上、『想定外』は起こり得るのが前提です」

 地震の発生要因に活断層が注目されるようになり調査が進んだのは、阪神・淡路大震災以降だ。火山も地質学的な調査や観測機材をもっと投入し、より精度の高い火山活動の実態把握や履歴調査を国家レベルで行うべきだ、と棚田氏は唱える。

 噴火から身を守るにはどうすればいいのか。噴石の防備に有効なのはヘルメットの着用だろう。建物の中や大きな岩の陰に身を伏せることも重要だ。警戒情報を敏感にキャッチすべきなのは言うまでもない。しかし、と前出の山田さんは言う。

「今回のように全く予兆が観測されていない場合はお手上げでしょう」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年2月5日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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