報道陣の取材に答える男性。服の後ろ側は噴石で破れたという (c)朝日新聞社
報道陣の取材に答える男性。服の後ろ側は噴石で破れたという (c)朝日新聞社
【図】24時間体制で監視している火山(AERA 2018年2月5日号より)
【図】24時間体制で監視している火山(AERA 2018年2月5日号より)

 またもや起きた「想定外」の災害。1月23日に発生した群馬・長野県境の草津白根山の 噴火は訓練中の自衛官の命を奪い、スキー客らを恐怖に陥れた。どう備えればいいのか。

【図】24時間体制で監視している火山はこちら

「まさか草津で……。全くノーマークでした」

 草津白根山噴火の衝撃を語るのは、東京都武蔵野市在住で登山歴50年の山岳ガイド「風の谷」主宰者、山田哲哉さん(63)だ。

 噴石が降り注いだ草津国際スキー場(群馬県草津町)は、小学生の子どもを連れて何度も訪れた。遊歩道の整備が行き届き、夏場は軽装で山頂に立てる。一帯はオールシーズン満喫できる行楽地だ。山田さんは言う。

「温泉地ですから、ここは活火山なんだという感覚はありましたが、噴火に注意する意識は皆無でした」

「危険な活火山」は日本に今、どれくらいあるのか。国内111の活火山のうち、気象庁が「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山」として2009年の火山噴火予知連絡会の報告を踏まえ選定した火山は47。さらに、十和田、八甲田山、弥陀ケ原の3山を追加した50火山が、24時間体制で観測・監視する「常時観測火山」だ。草津白根山も含まれている。

 しかし、今回の噴火は「想定外」だった。なぜ、こんなことが起きるのか。

 草津白根山は「白根山」や「本白根山」など火山活動でできた一帯の山々の総称だ。今回の火口は、水蒸気噴火の頻度が高く、従来警戒を強めていた「湯釜」ではなく、2キロ南の「鏡池」付近とされる。このため、気象庁が「3千年間噴火していない」と見ている本白根山側の警戒監視は、実質的にカバーしきれていなかったのが実情だ。

 本白根山の噴火の年代をめぐっては別の見方もある。

 富山大学の石崎泰男准教授(火山地質学)らは過去の噴出物の分析や地層の放射性炭素年代測定をし、最新の噴火は1500~1200年前と推定。それ以降も、小規模噴火が繰り返された可能性を指摘する。石崎准教授は言う。

著者プロフィールを見る
渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

渡辺豪の記事一覧はこちら
次のページ