杉原千畝は第2次世界大戦中、ユダヤ人に日本通過ビザである「命のビザ」を発給。NPOでは広く世界中に「命の大切さ」「平和の尊さ」を発信(撮影/岸本絢)
杉原千畝は第2次世界大戦中、ユダヤ人に日本通過ビザである「命のビザ」を発給。NPOでは広く世界中に「命の大切さ」「平和の尊さ」を発信(撮影/岸本絢)

 第2次世界大戦中にユダヤ人に日本通過ビザ「命のビザ」を発給した杉原千畝の孫にあたるNPO杉原千畝命のビザ副理事長を務める杉原まどかさん。ポーランドで300人ものユダヤ人の命を救った夫婦を描いた映画「ユダヤ人を救った動物園」の公開に際し、平和について胸の内を明かした。

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 映画「ユダヤ人を救った動物園」はポーランドがナチスドイツに占領されるという大変な状況の中で、いろんな人たちが抵抗して「どうしたらユダヤ人を助けられるか」と知恵を働かせる。見つかったら全員の命がない中で、すごい勇気だと思いました。祖父・千畝が必死にビザを書いていた時代に違う場所で、犠牲になる人たちを見かねて祖父と同じように手を差し伸べた人たちが多くいた。その事実に強い感慨を覚えました。

 私は祖父のビザによって助かった「杉原サバイバー」の方々やそのご家族、ご遺族と交流があり、1年に最低1度は世界各地を訪れています。2017年は9月にオーストラリアを訪れ、15人くらいの関係者にインタビューをしてきました。あるご夫婦はポーランドのウッチという繊維工業の盛んな土地からリトアニアに逃げ、祖父からビザを受けてオーストラリアへ。そこで繊維業を立ち上げ成功されましたが、日本の大阪の商社と取引していたそうです。祖父の手記に「ビザ発給は国益になる」という一文がありますが、人助けが国益にも繋がるのだと改めて実感しました。

 人権の世紀といわれる今世紀ですが、今なおあちこちで戦争が起きている。人類が求めるべきことは人を殺すことではなく平和です。今を生きる私たちは、77年前に実際に何があったかを知ることが大切なのではないか。

 現在講演活動をしていますが、歴史を知る私たちが話すことをやめてしまったら史実が風化してしまうという危機感があります。一人でも多くの方にこうした映画を見てもらいたいと思います。(談)

AERA 2018年1月1-8日合併号