11月11、12日に開催された、コンピューター将棋の頂点を争う、電王トーナメント(ドワンゴ主催)(撮影/松本博文)
11月11、12日に開催された、コンピューター将棋の頂点を争う、電王トーナメント(ドワンゴ主催)(撮影/松本博文)

 AI(人工知能)の台頭に揺れる将棋界。コンピューター将棋の現状と可能性を将棋ライター・松本博文氏が解説する。

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 17年春にあったドワンゴ主催の人類とコンピューター将棋のトップ同士の真剣勝負「電王戦」。「PONANZA」(ポナンザ)に敗れた佐藤天彦叡王・名人は対戦後、「個人的な意見」としながらこう言った。

「現在のプロ棋士の強さを超えていると言ってもいいぐらい」

 今や名実ともに、コンピューターは人間よりも強い。今後どれだけ発展するのだろうか。

 山本一成が開発したPONANZAは、近年の最強プログラムだった。一方で、他の多くの開発者は平岡拓也開発の「Apery」(エイプリー)、磯崎元洋開発の「やねうら王」といったオープンソースの強豪プログラムをベースに、改良を重ねている。その結果、全体のレベルは底上げされ、青天井とでも言うべきペースで強くなっているのだ。

 そんなコンピューター将棋の主な競技会は半年ごとにある。初夏の世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)と、秋の電王トーナメントだ。この2大会で上位となるには、半年前のプログラムに7割以上勝てないと難しい。プロ棋士でもありえないペースだ。

 17年のWCSCでは、瀧澤誠が開発した「elmo」(エルモ)が躍進。PONANZAなどに勝ち、世界一の座を得た。11月の電王トーナメントでは、野田久順らが開発した「平成将棋合戦ぽんぽこ」が、やはりPONANZAなどに勝って優勝。コンピューターが「名人」を超えた今も、開発者は改良を続けている。原動力は人間の本能、飽くなき探究心だ。

 さらに12月、羽生が「永世七冠」を達成した翌日に、コンピューター将棋界に衝撃が走った。

 AIのディープラーニング(深層学習)の手法でAlphaGoを開発し、囲碁で人間を超えたGoogle傘下のディープマインド社が、将棋プログラムAlphaZeroを開発した、というのだ。

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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