発表した論文によると、AlphaZeroは日本のelmoを相手に90勝8敗2分で圧勝。全貌は不明だが、コンピューター将棋、さらには将棋の技術発展のスピードさえ加速させることもあり得る。伸びしろが示されたことは、人類を400年にわたって魅了した将棋が、途方もなく奥深いということを証明したことにもなる。人類最強の羽生善治が永世七冠達成後に口にした「将棋そのものを、本質的にはまだまだわかっていない」とする言葉は、実感でもあるのだろう。

 詰将棋などの伝統的な手法で鍛えられた藤井聡太四段は、コンピューター将棋を研究に取り入れ、さらに強くなろうとしている。これから「デジタルネイティブ」と呼ばれる子どもたちの世代が、初めから途方もなく強くなったコンピューター将棋ソフトで研鑽を積むとすれば、人類も果たしてどれだけ強くなるのか、予想もつかない。(文中敬称略)

(将棋ライター・松本博文)

AERA 2018年1月1-8日合併号より抜粋

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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