だが羽生に続く最強の系譜。やはり同じ道をたどるのか。現在、中3で、名古屋大学教育学部附属校(中高一貫)に在学する藤井は、来年度から高校に進学する。実家のある愛知県瀬戸市から、大阪や東京の将棋会館への遠征を繰り返す藤井は、すでに多忙だ。それでも藤井はあえて、困難な道を選んだ。

 実は先輩の羽生は、あまりに勝ちすぎたために高校の出席日数が足りなくなり、後に通信課程で卒業資格を得ている。苦労をしつつ、盤外では将棋界の第一人者として、社会的な模範となるような人生を自ら歩んできたのだ。もしかしたら藤井もその強さゆえ、高校卒業が危ぶまれることもあるかもしれない。(文中敬称略)

(将棋ライター・松本博文)

AERA 2018年1月1-8日合併号より抜粋

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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