トランプ氏は金氏を「病気の子犬」と批判。対話を探る国務長官との不仲説も絶えない (c)朝日新聞社
トランプ氏は金氏を「病気の子犬」と批判。対話を探る国務長官との不仲説も絶えない (c)朝日新聞社

 北朝鮮の核・ミサイル開発阻止へ“最大限の圧力作戦”を進める日米。だが北朝鮮は2カ月半の沈黙を破り、またICBM(大陸間弾道弾)級を放った。

「北朝鮮が核・ミサイル開発を執拗に追求し続けていることが改めて明らかになった」
 
11月29日早朝、安倍晋三首相はトランプ米大統領に電話で訴えた。未明に北朝鮮が新型弾道ミサイル「火星15」を高い角度で日本海に落とす軌道で撃ち、過去最高の4千キロ超まで上昇。米本土に届きうる今年3度目のICBM級発射に対して、「圧力を最大限まで高めるという認識で一致した」(安倍氏)。

 トランプ氏肝いりの「残忍な政権を孤立させる、最大限の圧力作戦」は、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射が鳴りを潜めたこの2カ月半も続いていた。

 9月3日の北朝鮮による6度目の核実験に対し、米国主導で国連安全保障理事会が9度目の制裁決議を採択し、石油輸出を3割削減。爆撃機が朝鮮半島上空へ向かうなど米軍の訓練が頻繁に発表されるようになり、トランプ氏がアジア歴訪中の11月12日には米空母3隻が日本海に集結した。

 そして、20日のテロ支援国家への再指定だ。冷戦期から北朝鮮に独自の経済制裁を重ねる米国は、「最高レベルの制裁」へ13社を対象に追加。うち4社は中国企業で、北朝鮮の主要貿易相手の中国にも厳しく出た。

 安倍首相も完全に同調。テロ支援国家指定については9年前の解除には拉致問題が未解決だと批判しただけに、トランプ氏来日時の6日の首脳会談で再指定を求めた。日本の独自制裁も追加し、朝鮮半島周辺での米軍の訓練に自衛隊が参加した。

 安倍首相は29日の国会で、「日米同盟は揺るがないと明確に示した。北朝鮮の政策を変えさせるためあらゆる手段で圧力をかけないといけない」と答弁。「武力による威嚇」を憲法9条が禁じる中、日本にとっても瀬戸際の世界へと踏み込む。

 安倍首相は制裁のカギを握る中国が本腰を入れるとして「厳しい冬を迎える中、効果を注意深く見極める」と語っていた。だが、冬を目前にした駆け込み的な今回の発射で「最大限の圧力作戦」は正念場を迎えた。

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