薄毛を“魅せる”会社「カルヴォ」では、薄毛の人が似合う髪形や服装、メガネなどの小物を提案。薄毛男性の「変身」を支援している(撮影/久保佳正)
薄毛を“魅せる”会社「カルヴォ」では、薄毛の人が似合う髪形や服装、メガネなどの小物を提案。薄毛男性の「変身」を支援している(撮影/久保佳正)
カルヴォ代表 松本圭司さん(44)/2016年9月、機械メーカーを脱サラし、薄毛を“魅せる”会社「カルヴォ」を設立。写真は自身のビフォーアフター(撮影/本人提供)
カルヴォ代表 松本圭司さん(44)/2016年9月、機械メーカーを脱サラし、薄毛を“魅せる”会社「カルヴォ」を設立。写真は自身のビフォーアフター(撮影/本人提供)

 顔の美醜よりも気軽にいじられる男性の薄毛。薄毛男性の魅力の研究も始まっている。薄毛が恥ずかしくない社会を、と思う。

【カルヴォ代表 松本圭司さんのビフォーアフター】

「あ~、まぶしい!」

 20代後半、徐々に脱毛が気になりだしたころ、松本圭司さん(44)は、同僚から何度もそんなふうにいじられた。ぐさっときたが、ハハハ、と愛想笑いで受け流す。途端に、自分がむなしくなった。

「自分自身がピエロになった感じでした」

 腹も立ったが、相手にさほどの悪意はない。本気で怒れば、空気を悪くしてしまう。我慢するうちに、少しずつ自分の性格がゆがむのを感じた。自信も持てなくなり、「こんな自分に結婚ができるのか」と焦った。

 ハゲや薄毛の男性には、軽い調子でからかいを受けた経験を持つ人が少なくない。『ハゲを生きる』の著者で、昭和大学の須長史生准教授は、男性間には、ハゲや薄毛など相手の外見的特徴をからかうことで相手をマウントし、自身の優位性を誇示する構造があると指摘する。さらに、そのからかいを「笑い飛ばす」など、前向きに乗り越えられた人が“男性らしい”と認められる。セクハラに対する認識が進み、以前よりもハゲに対する侮蔑の色は薄れたというが、基本的な構造は今も変わらず残っている。

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