女性からさんざん酷評されたこのCMだが、「気持ちは若干わかる」とする男性は少なからずいた。清田さん自身も、「専業主婦の家庭に育ったから、昭和的な父親像との間で揺れ動く男性の気持ちは、わからないでもない」。千葉商科大学専任講師の常見陽平さんも、「5%程度ならわかる」と答えた。自身の中に「仕事一本やりの父親像」はないが、「ひとかどの人物になって、妻と娘を守りたいという、昭和的な発想はどこかにある」からだ。

 自分のフィールドでは、負けたくない。勝負にこだわる男性心理は本能に近く、実は多くの男性にとって自明のことだ。「エリートなら肩書や収入、オタクならその分野の知識量、特に女性の前では負けたくないと考えるのです」(清田さん)

 それがよすがになると、負けを悟った瞬間、自我が崩壊する。桃山商事は、夫のモラハラに悩む妻からこんな相談を受けた。

 夫は30代半ば、妻はその3歳下。会社の先輩・後輩だったが、結婚すると夫は家庭で妻に威張り散らし、口答えも許さない。

「男女の行き違いの範疇を超えていると心配になりました」(同)

 しばらく後だ。妻が置き忘れた給与明細を夫は見てしまった。

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