そこには、先輩の自分より遥かに高い額面が記入されていた。

「彼女は真面目で業績もよかったんです。夫はワナワナと震え出し、頭に爪を突き立て、しまいに嘔吐した。何重にも敗北を感じ、アイデンティティーが崩壊したのでしょう。彼女には対策しようがなく夫が変わるしかなかったが、変われなかった。最終的に彼女は離婚できたようで、本当によかったです」(同)

 共働き家庭が増える一方で、妻は専業主婦がいい、という価値観の男女もいる。ところが、その価値観に環境や条件が見合わないと、苦しい事態も起こる。

「つらいのは、家庭を支えるだけの収入や同じ価値観の相手が得られない場合。そういう男性は『どうせ収入目当て』『イケメンならいいんだろ』と、なぜか女性に不満を向けがち。偏った男尊女卑的思想の背景には、『不当に損をしている』という、せせこましい既得権益へのこだわりが見え隠れします」(同)

(編集部・澤志保)

AERA 2017年12月4日号より抜粋