「これだけパンチの効いた題材はほかではありません。莫大な量のセリフと格闘する日々です。佐藤さんのセリフの間のコンマ何秒の世界を突き詰めていく、そのせめぎ合い、ゆずるのか、ゆずらないのか、ここは張るのか引くのか、といったことができる。緊張しながらも刺激になるし、楽しい」(江口さん)

 原作はノンフィクションであっても濃密な警察小説としても読めるし、刑事たちは真相究明に奔走するジャーナリスト群像のようでもある。そんな役柄にどう向き合い、入り込んだのか。

「僕が木崎に感じ取ったのは、刑事としての狩人感です。この外務省ノンキャリアはどんな金の使い方をしたのかと。ただ実際に仕事をする刑事とドラマの中の刑事は違う。そこを自分の中で合わせてフィクションとしてのリアルな刑事像にトライするということかな」(佐藤さん)

「木崎の執念に対して、自分もあわよくば出世したい上昇志向を持っている。出世して上に行けば見え方も変わってくるし、組織のために立ち振る舞えることが増えるという考え方を持つ男です。同じ刑事でも木崎とは違う価値観を持っている斎見という人間をどう出してゆけるか」(江口さん)

 二人の熱い思いが伝わってくる。骨太な社会派ドラマと火花を散らす演技に期待したい。(ライター・田沢竜次)

AERA 2017年11月6日号