県立川越高(埼玉)/映画にもなったウォーターボーイズを旗頭に例年2日間で2万人前後も動員してきた川高の「くすのき祭」。川越駅や本川越駅に降り立つと、スクールカラーの法被姿の生徒が近づき、バスまで案内してくれるサービス精神には驚く(撮影/鈴木隆祐)
県立川越高(埼玉)/映画にもなったウォーターボーイズを旗頭に例年2日間で2万人前後も動員してきた川高の「くすのき祭」。川越駅や本川越駅に降り立つと、スクールカラーの法被姿の生徒が近づき、バスまで案内してくれるサービス精神には驚く(撮影/鈴木隆祐)
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県立浦和高(埼玉)/川越と覇を競う「浦高祭」の門づくりの壮大さと丁寧な仕上がりに毎年唸らされる。企画の多彩さでは群を抜き、男子校ならではの女装コンテストも見ものだが、懐かしのフォークダンスでも盛り上がる(撮影/鈴木隆祐)
県立浦和高(埼玉)/川越と覇を競う「浦高祭」の門づくりの壮大さと丁寧な仕上がりに毎年唸らされる。企画の多彩さでは群を抜き、男子校ならではの女装コンテストも見ものだが、懐かしのフォークダンスでも盛り上がる(撮影/鈴木隆祐)

 偏差値が伸びるだの東大進学者数がすごいだのと、数字ばかりが飛び交う雑誌や塾情報。そんなもんじゃ素顔は分からない。どうやら「秋の文化祭」にこそ、その学校の真価が見えるらしい。ジャーナリストの鈴木隆祐氏がレポートする。

【写真】浦和の「浦高祭」の校門の飾りはミラノ大聖堂

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 文化祭には高校の創造力があらわになる。多くの名門と称される学校では何十年と続く独特の伝統も全体行事には見られる。また、いわゆる文化部もなにより文化祭を晴れの舞台と捉える。つまり、学校を知る最大のチャンスなのだ。

 例えば、校門をどう飾るかでも千差万別。埼玉の県立の雄、浦和高校と川越高校の入場門はことに見ものだ。どちらも専従の門隊・門班が企画し、ひと夏を費やして製作にかかる。川越の「くすのき祭」の本年度のモチーフはカザフスタンのゼンコフ正教会。黄色いド派手な見た目で、遠くからでも目を引いた。一方の浦和の「浦高祭」はミラノ大聖堂。川越とは対照的に細やかなファサードが際立つ白亜の殿堂だ。

 浦高祭公式サイトの「門隊日誌」というブログを見ると、製作プロセスが把握できるが、私が様子を見に行った開催2日前の時点では、まだ外装が半分程度残されており、去年の門担当の現3年生たちが応援に駆けつけたという。これだけの文化祭であれば、OBにとっても母校を再訪するよい機会になりそうだ。

 川越は映画やドラマ化もされた、水泳部のシンクロ「ウォーターボーイズ」で有名だろう。賛助出演の他部の生徒も含め、総勢50余人が水の中や上を、イルカのように舞い踊り、往年のハリウッドの水中ミュージカルを見るようだった。

 しかも、観る者も固唾をのむ30分以上のハードな公演を、日に5~6回、2日間で11回もこなすのだ。学習至上の、合理性第一の新興の進学校にはまねのできない、こうした“酔狂”に学校の真価も見られようもの。この大看板のおかげもあるが、2日間の来校者数は延べ1万7712人を数えたという。

 また、川越の場合、来校者への案内もそろいの法被姿の生徒が総がかりで行い、町と一体化した祭りの賑わいを演出。こうしてトップ校として貢献することで、地域の信頼を勝ち得ている様子にも大変感銘を受けた。(ジャーナリスト・鈴木隆祐)

AERA 2017年11月6日号より抜粋

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