首相になるためには、まずは国会議員にならなければならない。2019年は消費増税があり、その信を問う意味で衆参ダブル選挙が行われる可能性もある。しかし東京五輪が終わるまでは、国政進出は難しいでしょう。今回の衆院選を受けた世論調査でも、約7割は「都知事を続けるべきだ」と答えている。彼女にとってチャンスが生まれるとすれば、東京五輪後の衆院選だ。年齢の問題はあるが、それは決定的な要素にはならない。

――小池さんは、自分と近い野田聖子前衆院議員や、かつて師弟関係にあった二階俊博幹事長の選挙区には候補者を立てなかった。自民党との連立政権や切り崩しての政権奪取を考えているのではないか。

 そうした狙いはあるでしょう。一方、自民党、公明党が希望の党との連立を望むのか。二つの難しい問題がある。一つは選挙協力だ。自民党と公明党は、はっきりと選挙でのすみ分けができている。公明党に小選挙区九つを渡す代わりに、比例代表、あるいはその他の小選挙区では公明党・創価学会が自民党に協力する。そうした意味では日本維新の会のほうが組みやすい。大阪の自民党は元来選挙に弱く、そこを切り崩せばいいからだ。今回の衆院選で自民党が30議席程度失えば改憲発議に必要な3分の2を確保できないが、そのパートナーはまず維新だろう。

――もう一つの問題は?

 小池さん自身の問題だ。自民党との間に信頼関係がない。例えば今回も都知事に専念していたときは、森友・加計学園問題を口にしていない。ところが、選挙が始まると批判を始めた。もっとも、小池さんが態度を変える人だということは、安倍首相は12年の自民党総裁選で痛切に実感している。最初は安倍陣営にいながら、数日後には石破茂氏の支援に回った。

――来年の総裁選で小池さんに近い石破さんや野田さんが首相になれば、希望の党との連立が進むかもしれない。

 自民党が単独過半数(233議席)割れすれば責任論が出てくるが、今の政権を支えている麻生太郎副総理、二階幹事長、岸田文雄政調会長が安倍批判に流れるとは思えない。党内で表立って安倍批判をしているのは脱アベノミクス勉強会を仕切る村上誠一郎さんなど数人。安倍おろしは起きるけれども、政権を揺るがすほどの勢力ではない。

――自民党が当初想定した15~30議席減より議席を失えば、来年の総裁選での首相の3選は危うくなる。小池さんが安倍首相以外の自民党との連立を仕掛けてくることはないか。

 そもそも、衆院選後に希望の党が存続するかが疑問だ。大半の議員は安保法制に反対し、憲法改正に乗り気でなかった民進党出身の議員。彼らがまとまっていけるのか。

 19年夏の参院選に向けて、再び野党再編が起こると考えます。まだ結果は出ていませんが、受け皿が一つにならないと自民党には勝てないことははっきりした。野党再編となった時に小池さんが影響力を保てるのか。希望の党の衆院議員にとっては、今回の選挙が終われば当分選挙はないわけで、とりわけ勢いが落ちてきた小池さんに利用価値はない。多少の配慮はあると思うが、小池さんの意向とは別に国会運営をやっていくようになるだろう。野党再編が小池さんを中心に行われるか、それとも小池さん抜きで行われるか、そこが小池さんの国政進出のポイントになる。

――そこで小池さんが影響力を保てなければ、総理への道も険しくなる。

 今回、小池さんにとっては最大のチャンスだったが、さまざまな理由で、バッターボックスに立たなかった。総理になれる可能性は風前の灯というのが現実でしょう。それでも彼女のすごさは、大衆を動かす力。弱点は、組織のマネジメントができないこと。まずは東京五輪を成功させ、もう一度挑戦してくるはずです。

(構成/編集部・澤田晃宏)

AERA 2017年10月23日号