「ミュージシャンには早逝する人も多い。音楽仲間ががんで亡くなった時に、いいことをしても早く死ぬ人もいるし、悪いことをしていても長生きする人もいるんだなと思った。何か分かるかもしれないと思い占いを勉強しだしたら、面白くなって。僕は霊感などは、一切ないのですが」

 しかし、ミュージシャンも占い師も、形のないものを扱うことにおいては同じだ。非常階段は40年近いキャリアを持ち、海外にも多くのファンを持つ。

「僕がやっているようなニッチな音楽って、1万人に1人が分かってくれればいいと思っています。僕らの音楽をいいと思う人のためだけに演奏すればいいと思ってるんです」

 無理に売れようという気は一切ない。全然知らなかった人が、「良かった」と言ってくれる、そういうことが少しでも世の中に広がっていけばいい。その姿勢は占いでも一緒だ。

「相談にいらして、ここに座っている間、相談者の方の現実は何も変わっていません。でも、気持ちや価値観が変わってくれればいいんです。そうすれば占い師として成功だと思います」

(ライター/濱野奈美子)

AERA 2017年10月2日号