NTTが開発を進める「触感電話」。触感だけでなく、相手の表情を表示させることもできる(撮影/倉田貴志)
NTTが開発を進める「触感電話」。触感だけでなく、相手の表情を表示させることもできる(撮影/倉田貴志)

「どうしてそこまで怒るの?」「そこまで言わなくてもいいのに」――。このところ、イライラする人や罵詈雑言を目にする機会が多いとは思いませんか? あそこでもここにもいる「感情決壊」する人々。なぜ私たちはかくも怒りに振りまわれるようになったのか。それにはちゃんと理由がありました。アエラ9月11日号では「炎上人(えんじょうびと)の感情決壊」を大特集。怒りの謎に迫ります。

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 相手が電話のプッシュボタンを押すと「グサッ」「モコモコ」「ズキューン」。そんな触感が、おなかに巻いた腹巻きのようなベルトから伝わってくる。これはNTTが研究を進める、触感でコミュニケーションをとる「触感電話」だ。

 この触感電話を開発したNTTコミュニケーション科学基礎研究所特別研究員の渡邊淳司さんはこう話す。

「コミュニケーションでは、相手が何を言ったかではなく、どう言ったのか、どう反応したかという『身体性』が重要。文字だけだとこれが抜け落ちて、伝えたいことが十分に伝わらずもどかしくなります。あえて身体性だけを伝えようと触感電話を作りました」

 LINEのスタンプを重宝する人は少なくない。あえて文字を使わないことで相手を慮り、コミュニケーションがスムーズになるのだ。

●「文字だけ」が怒り呼ぶ

 触感電話もこうしたスタンプと同じようなものだと渡邊さんは話す。さらに、

「人は怒るもの。対面や電話だと表情や声の調子から怒りの兆候が伝わりやすく、相手も対応が取りやすいが、文字だけのやりとりだとそれが伝わりづらく、怒りが爆発する感情決壊につながりやすくなります。そこで、『今ちょっと怒っているよ』というサインを『ツン』と触感で伝えることで、感情決壊しないコミュニケーションを取れるようになるのではないでしょうか。また、感情を一度メッセージにすることで『今怒っている』と自身の状態を認識し、適切な対処を取れるようになります」

 こうした、スタンプのような感情のやりとりを、よりスムーズにする取り組みも出てきた。

 スマートフォンの前面カメラに向かって笑顔を向けると、

「JOY 100%」の表示とともに、笑顔マークが表示された──。

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