──確かにあのタイトルは、“真のヒーローは?”みたいな深読みができました。

 なので今回は、「さほど意味はなくても、無粋にならない言葉ならいいんじゃないの?」っていうかね。そう。そんな次第なんですけども。

──来年はサザンオールスターズの40周年もありますし、この秋からは桑田さんのツアーも始まります。音楽の旅は、まだまだ続きますね。

 サザンもね、あっという間に年数だけはたったんですけど、最近思ったのは、このメンバーだったからこそお互いのバランスを取ることができたんだろうな、ということですね。もちろんお互い、がまんし合っている部分もあるでしょうし、原(由子)さんなんか、メンバーでありつつ、僕の女房もやってくれてますからね。

 僕は、現実の僕らというより、“サザンオールスターズという絆”みたいなものをファンタジーとしてお見せできたらと思ってるんですよ。もちろん、僕らだけが盛り上がってもしょうがないですから、来年はファンのみなさんと歩調を合わせつつ、「ありがとう」の気持ちを伝えたいです。

──桑田さん個人にしろサザンにしろ、ここまでやってこれた秘訣があるとしたら、教えていただきたいのですが。

 秘訣なんてないです。ラッキーなことに、ここまでやってこれただけで。でも、クヨクヨするときはクヨクヨし、反省する時は反省しないとダメですね。もちろん、反省ばかりでもダメで、調子に乗るときは乗っかって、天狗になって、鼻っ柱を折られてもとに戻るというか……。そんな感じでここまでやってきたし、これからもやっていくんじゃないですかね。

(文/音楽評論家・小貫信昭)

AERA 9月4日号より抜粋