会場で自分もメーカーを体験したが、額の中に浮かび上がったのは、野菜で描かれた“ゴツいおばさん”。
「この機械は壊れてる」
と思いかけたが、人に見せるとほとんどの答えは「似てる」だった。ちぇ。
●時を超えて楽しい仕事
ドットバイドットの開発者たちは、開発過程で16世紀に生きた画家、アルチンボルドの苦労を共有したと感じる場面も少なくなかったという。
最後にその開発者の面々に聞いてみた。アルチンボルドはなぜ、わざわざ寄せ絵で皇帝を描いたと思いますか?
クリエイティブディレクターの谷口恭介さんの答えは、
「見た人のリアクションを想像して、間接的なコミュニケーションを楽しんでいたのかもしれないですね。現代のインタラクティブなツールの開発作業とも似ています」
プログラマーのSaqoosha(サクーシャ)さんはこう考えた。
「目が悪くて、野菜が人の顔に見えてきたのでは。そんな偶然でもない限り、生まれなかっただろう作品だと思う。時を超えて僕たちに楽しい仕事をさせてくれた偶然に、感謝ですよね」
(ライター・福光恵)
※AERA 2017年8月28日号