アルチンボルド自身に扮し、展覧会の音声ガイドを務めたのは、俳優の竹中直人さん。アルチンボルドメーカーは、その竹中さんをこんなふうに描いた。おでこやほおの辺りが似ているような……
アルチンボルド自身に扮し、展覧会の音声ガイドを務めたのは、俳優の竹中直人さん。アルチンボルドメーカーは、その竹中さんをこんなふうに描いた。おでこやほおの辺りが似ているような……

 この夏、SNSのタイムラインで、額に入ったアルチンボルド風の肖像画をやたらと見かける、という人はいないだろうか。これ、アルチンボルド展で人気の「アルチンボルドメーカー」なるアトラクションが生み出したものだ。

●自動生成では似ない

 会場に設置された額の前に立つと、センサーがその人の顔を認識。額の中で次々に野菜や果物が積み上がっていき、あっという間にアルチンボルドが描いた「夏」のような肖像画が浮かび上がる。

 モデルが顔の向きを変えると、額の中の野菜の肖像画も一緒に付いてくるという、3D時代ならではの仕掛けもあって、本物のマクシミリアン2世も体験できなかった、進化した皇帝気分も味わえる。

 約半年をかけてこのシステムを完成させたのは、「ドットバイドット」というクリエーター集団。人の顔をパターンに分けてイラスト化し、ここから野菜と果物のCGを使ったアルチンボルド風の肖像画を描き出すシステムを開発したという。

 当初のもくろみでは、AI(人工知能)の機械学習で顔のパターンを覚え込ませ、あとは自動で肖像画を生成……できるはずだった。ところが、数千人分のサンプルを作り人の目で検証したところ、ほとんどが「似てない!」という結果に。やがて、髪形が顔の印象を大きく左右することがわかり、髪形認識のプログラムを追加。また一から作り直すことで、現在の「アルチンボルドメーカー」ができあがったという。

 ドットバイドットの関賢一プロデューサーは言う。

「答えのある問題には忠実に答えてくれるAIも、似ている、似ていないという、人によっても判断にばらつきのある問題を解決するのはまだ苦手です。結果的に、機械学習に頼ったのは人の顔のヒゲやしわの処理などプログラムのごく一部となりました」

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