例えば望月さんと齋藤さん、丸山さんの3人は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が主催するセキュリティー研究者育成事業、SecHack365に合格。1年間イベントや遠隔実習で腕を磨くことになった。また、望月さんは友人が設立したIT企業の最高技術責任者に就任。小高さんはIT企業のラックが、若手エンジニアを支援する目的で開催している「すごうで2017」に選ばれて活動支援金100万円を獲得。今後は研修などに参加し、技術を磨くつもりだ。さらに将来の目標まで変わった。

「元々ゲームが好きでクリエーターを目指していましたが、今はセキュリティーのエンジニアになって日本を守りたいと思う」

 在学中から企業も関心を寄せる人材が輩出する高専とは、一体何者か。

 元々は技術者を養成する目的で1962年に設置された高等教育機関。15歳から5年間(商船学科は5年半)の一貫教育で、高度成長期に日本が誇る「ものづくり」を支える人材を送り出してきた。現在は国立51校、公立3校、私立3校があるという。

●海外にも“高専モデル”

 カリキュラムは、低学年のうちは高校で学ぶ教養科目が中心だが、学年が上がるにつれて専門科目の比重が増す。費用も安く、学費は入学料8万4600円、年間授業料23万4600円と国立大学の半分以下。さらに国立高専すべてが寮を併設し、月700~800円と破格の安さだ。経済的な事情を抱える子どもの進学の受け皿にもなっているという。

 高専で指導する教員の中には、博士号を取得した研究者も多く、それぞれの研究室を持ち、雰囲気は高校というよりも大学に近い。実際に「生徒」ではなく「学生」と呼ばれ、ある学生は「入学後のオリエンテーションで、先生から『あなたたちは生徒ではなく学生です』と言われ戸惑いましたが、大人として扱われたようで誇らしかった」と話す。

 いまやASEAN・中南米・アフリカ諸国から視察が訪れるほど。さらに国立高等専門学校機構は途上国支援の一環としてモンゴル、ベトナム、タイにこの“日本型高専モデル”を展開しているという。

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