オープンキャンパス真っ盛りのこの季節。最近では親同伴で学内を回る姿も珍しくない。教育環境や入試倍率、学費もそうだが、“出口”の就職率なども気になるところ。AERA 8月28日号で、コスパのいい進学先を調べてみた。

【図表】5年連続実就職率90%以上の大学・学部はこちら

 今回、AERAでは大学通信の協力を得て、5年連続で実就職率が90%超の全国の大学・学部を抽出した。より実態を反映させるため、実就職率は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で出した。一般的な「就職率」の場合、分母を「就職希望者」とするため、フリーターになったり、就活の意欲をなくしてしまったりした学生の数を除外できる。意図的に数字を高く見せることも可能なのだ。ちなみに今春大卒の「就職率」は97.6%(文部科学省・厚生労働省調べ)。サンプルが違うため単純比較はできないが、ごまかしがきかない「実就職率」(大学通信調べ)は87.3%だ。

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 在学中に育む実践力とプロ意識が、高い実就職率に結びついているのは、金沢工業大学(石川県野々市市)と星薬科大学(東京都品川区)だ。

 金沢工大では、「夢考房」がものづくりマインドを育む場となっている。地上3階建て、延べ床面積4994平方メートルの工房には、金属加工もできる3Dプリンターなどさまざまな工作機械、実験設備が揃う。

「ここは授業で学んだ知識やアイデアを形にする場所。夢考房で思い通りいかないと、もっと知識をつけようと授業に真剣に臨むようになります」(夢考房の内海考司技師)

●最後の1人まで支援

星薬科大学 研究室にはアイルランドからの留学生も。同大は薬学の単科大の中でも特に国際交流が盛ん(撮影/山本倫子)
星薬科大学 研究室にはアイルランドからの留学生も。同大は薬学の単科大の中でも特に国際交流が盛ん(撮影/山本倫子)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(1/4)【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(1/4)
【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(2/4)【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(2/4)
【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(3/4)【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(3/4)
【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(4/4)【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)
5年連続実就職率90%以上の大学・学部(4/4)
【表の見方】データは、各大学発表による就職状況。医学部・歯学部を除き、実就職率が5年連続90%以上の学部を抽出、2017年の実就職率が95%以上の学部を率の高い順に並べた。所在地は大学本部の所在地で、学部所在地と異なる場合がある。卒業者数は2017年の人数。授業料(円)は2017年度のもの。学科ごとに授業料が異なる場合は平均の額(小数点以下は四捨五入)を掲載した。実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。現在、北海道科学大学空間創造学部は工学部に改組、福井大学教育地域科学部は教育学部、中部学院大学子ども学部は教育学部に改称されている(調査・大学通信)

 現在、「ロボカップ」「人工衛星開発」など13のプロジェクトが活動中。ソーラーカープロジェクトのリーダー、工学部機械工学科3年の池田健到さんは言う。

「それぞれがアイデアを持っているので、とことん話し合って決めています。リーダーとして全員の意見をまとめるのは大変ですが、授業とは違う貴重な経験だと思います」

 プロジェクトの運営では、年間計画書を提出、予算管理も自分たちで行う。全学生を対象とする「プロジェクトデザイン教育」では、5~6人がチームを組み、問題を見つけ半年かけて解決に導く。企業担当者と、共同で取り組むこともある。企画部の志鷹英男広報課長は言う。

「教育こそ王道。教育の質を高めることで就職先の企業にも評価され、それが次の採用につながる好循環が生まれています」

 就職先はパナソニック、富士通、三協立山、JR西日本など全国にわたり、大手や上場企業に強い。キャリアスタッフは年間2千社を訪問し、データベースに登録されている企業は2万2500社以上。OB情報も就活履歴、成績、大学での活動等を網羅。学生全員に個別指導のスタッフがつく。進路開発センターの濱田浩之次長は言う。

「全体の就職率が高くても、学生にとっては0か100。最後の1人まで、支援を続けます」

●教育の中心は研究

 薬学部では薬剤師の国家試験合格を目指す学生が大多数だが、星薬科大学の亀井淳三教授は「本学では合格はゴールではない」と言い切る。教育の中心に「研究」を据え、そのプロセスの中で社会に出た時に活躍できる力を育むことを重視している。

 同大の前身は1911年、SF作家、星新一の父である星一が創業した「星製薬株式会社」の教育部。創業者が「研究」に並々ならぬ情熱を傾けたことが、研究重視の源流だ。

 同大の薬学科では全員が、3年生から研究室に所属し4年間、一つのテーマに取り組む。先輩から学び、後輩に教え、6年生では全体を統括する立場に立つ。

「研究の中で、チームの中でどう人間関係をつくり、問題を解決していくかを経験しているため、卒業時点で社会人としてのベースができている。よく本学の出身者が『新人離れしている』と言われるのは、そのためじゃないでしょうか」(亀井教授)

 学内の講演会ではそうした先輩から話を聞くことも多い。薬学科5年の井上将輝さんは言う。

「薬剤師にもいろいろなタイプがありますが、僕が目指すのは、医療チームの中に入り、一人ひとりの患者さんと密に関わっていける薬剤師。先輩方の話を聞く中で夢が明確になりました」

 現在は、超売り手市場の薬学部だが、飽和状態がやってくると亀井教授は気を引き締める。

「星の学生だから欲しいと言われる人材を育てねばならない」

(編集部/石臥薫子、ライター/柿崎明子)

AERA 2017年8月28日号