セリに上場される当歳馬と歩く繁殖牝馬。この数カ月後には離乳が行われるため、母子が一緒にいられる時間はほんのわずかとなる(撮影/工藤了)
セリに上場される当歳馬と歩く繁殖牝馬。この数カ月後には離乳が行われるため、母子が一緒にいられる時間はほんのわずかとなる(撮影/工藤了)
上場馬の評価は時として1千万円単位で上がっていく。ディープインパクト産駒は最初の一声で1億の評価がつくことも珍しくない(撮影/加藤夏子)
上場馬の評価は時として1千万円単位で上がっていく。ディープインパクト産駒は最初の一声で1億の評価がつくことも珍しくない(撮影/加藤夏子)
今年のセレクトセールは、セール市場最高の売却額を記録。「日本中のお金が、ここに集まっているようにも思えてくる」とも吉田照哉氏(中央)は話した(撮影/工藤了)
今年のセレクトセールは、セール市場最高の売却額を記録。「日本中のお金が、ここに集まっているようにも思えてくる」とも吉田照哉氏(中央)は話した(撮影/工藤了)

 ハイセイコー、オグリキャップ、ディープインパクト……。競馬史を彩るスターホースを送り出してきた北海道。かつては労働力であり、交通手段であり、食料でもあった馬。高額で取引されるセリの現場に行った。

*  *  *

 競馬ブームが再燃している。

 その火付け役となっているのが、キタサンブラック(牡5歳)という競走馬。オーナーは北海道出身の演歌歌手・北島三郎氏(名義は北島氏が代表を務める大野商事)であり、JRA歴代最多勝記録を更新し続ける、武豊騎手に鞍上がゆだねられてからは、GIレースを4勝する活躍を見せている。

 キタサンブラックが初めてGIレースを制した菊花賞以降、インタビューの際には持ち歌である「まつり」を、北島オーナー自らが披露することもあり、その際には競馬場全体から手拍子がわき起こっている。現在の競馬ブームを象徴するシーンだ。

 このキタサンブラックを生産したのが、日本の競走馬生産の約8割を占める、北海道の日高管内、日高町のヤナガワ牧場だ。同牧場ではDr.コパこと、小林祥晃氏の所有馬であり、GI(JpnI含む)レースで9勝をあげているコパノリッキー(牡7歳)も生産している。現在、日高では最も勢いのある生産牧場ともなっている。

●胆振と日高は対照的

 その一方で、生産頭数としては国内の2割に満たないシェアながらも、今年JRAで行われたGIレースで、8勝をあげたのが胆振(いぶり)管内。その核となっているのが社台グループ(社台ファーム、ノーザンファーム、追分ファーム、白老ファーム)だ。競馬ブームの再燃は好調な馬券のネット販売、クラブ馬主の増加という形でも証明されているが、馬産地の景気もまた、ここに来て上向いている。

 半農半酪の時代を経て、競走馬生産へと移行した日高の牧場とは対照的に、社台グループはその基礎となった旧社台ファーム時代から、競走馬の生産一本に取り組んできた。

 特に日本競馬を変えたと言われる名種牡馬、サンデーサイレンスを、グループ内の社台スタリオンステーション(競走馬の父である、種牡馬を繋養する牧場)に導入してからの隆盛が目覚ましい。今では社台グループの牧場が、その年、生産馬が最も多く勝利した牧場をランキング化するリーディングブリーダーにおいて、毎年のように上位を独占している。

次のページ