ただ、競馬ブームをつくったスターホースの多くが、日高から送り出されてきたことも事実。その代表馬が第1次競馬ブームを作り出したハイセイコー、そして、第2次競馬ブームの主役となったオグリキャップである。

 ハイセイコー、オグリキャップの生産牧場に共通するのが、家族を中心とした労働力だけで営む、いわゆる「家族経営の牧場」であることだ。家族経営の牧場では、日々の競走馬の管理だけでなく、出産、種付け、セリへの上場などを、限られた労働力だけで行う。必然的に管理を行う繁殖牝馬の頭数も限られ、一般的に家族経営の牧場で繋養される繁殖牝馬の頭数は、10頭ほどと言われている。

 一方、圧倒的な強さを武器に、第3次競馬ブームの主役を務めたディープインパクトは社台グループの一つ、ノーザンファームの生産馬だった。現在、ノーザンファームでは約700頭の繁殖牝馬を繋養。牧場スタッフの数は優に600人を超えており、その中には獣医師、装蹄師といった競走馬管理のスペシャリストも含まれている。その仕事内容もシステム化されており、繁殖牝馬だけを扱うスタッフのみならず、生まれてきた競走馬を、デビューまでの成長段階において担当するスタッフがいるなど、牧場というよりも、まさに一つの企業と言える。

 ノーザンファームだけでなく、社台グループの全ての牧場が、同じような管理を行っている。生産頭数では圧倒的なシェアを占める日高ではあるが、実は小さな家族経営の牧場の集合体であり、レースの他にもこうした「大対小」の戦いが、毎週のように繰り広げられている。
セレクトセールは活況

 その社台グループの牧場から送り出された生産馬を中心とした、競走馬市場のセレクトセールが、7月10日と11日、苫小牧市のノーザンホースパーク特設会場で開催された。セレクトセールは今年で20回目。これまで庭先取引(牧場と馬主間の取引)だけで流通していたような良質馬が上場され、取引馬の中からは多くのGIホースも誕生している。

 実はここ数年、競走馬市場は空前の盛り上がりを見せている。昨年、国内で開催された10市場における総売上額は245億1892万円(税抜き)となり、6年連続で総売上額が更新されている。中でもセレクトセールは単一市場では最高の売り上げを誇っているが、その主役となっているのがディープインパクトの産駒たち。種牡馬となってからは毎年のようにGI馬を送り出しており、今ではセリで1億円以上の評価がつく産駒も珍しくない。また1歳、当歳(その年に生まれた馬)と年齢別に行われるセレクトセールでは、当歳セリにキタサンブラックの全弟(母だけでなく父も同じ)で、ヤナガワ牧場の生産馬であるシュガーハートの2017(牡、父ブラックタイド)も上場。話題性溢れる上場馬が揃った今年のセールは、昨年を超えるような盛り上がりが期待された。

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