「趣味は何ですか?」。会話の糸口に聞かれることは多いもの。だが、これといって趣味がないと、この質問はプレッシャーだ。SNSにはリア充趣味に興じる様子がてんこ盛り。趣味界は、なんだかんだと悩ましい。インスタ映えを重視して「趣味偽装」する人、趣味仲間から抜けられずに苦しむ人もいるらしい。AERA 7月31日号ではそんな「趣味圧」の正体を探る。
楽しいからやっている、はず。なのに、したくもないのに「趣味」と言わされ、本当は好きなことが別にあるのに、隠している、なんてこと、ありませんか? 趣味「あり派」も「なし派」も実は苦しい胸の内。「趣味偽装」してませんか?
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澄み切った青空。芝のグリーンがまばゆく映え、爽やかなそよ風が頬をなでる。絶好のゴルフ日和だ。上司の会心のショットがとぶ。
「ナイスショット!」
晴れやかな声を上げたのは、そうでもしないと自分を保てないからだ。
いったい自分は何をしているのか。なぜ断れなかったのだろう。あと何時間続くのか……。
「趣味はゴルフ」
会社員の男性(49)は“趣味偽装”をしていた。出世頭の上司に「仕事のコミュニケーションに不可欠」と半ば強制された。週1ペースでクラブを振り、レッスンプロにもついた。定期的にラウンドもまわったが、もともと運動はあまり得意でない。やっていて楽しくないので、腕も上がらない。第1子の誕生直後ともあって、いやいや出かけるゴルフに、さらに妻の冷たい視線が刺さる。男性は当時を振り返って言う。
「2年が限界でした」
●趣味なんていらない!
忙しさを理由にフェードアウトし、付き合いの悪い人間だと社内では思われている。上司がほのめかしたように、出世にも響いているかもしれない。
「でも、やりたくもないものを無理にさせられ、ましてや『趣味です』なんて二度と言いたくない」
吐き捨てるように言う。男性は現在、無趣味だが趣味なんて持つ必要はないと考えている。第一、お金がかかる。住宅ローンもあるし、2人の子どもの教育費もこれからだ。