高校通算100本塁打の記念ボールを手にする清宮。春夏通算3度目の甲子園を目指す (c)朝日新聞社
高校通算100本塁打の記念ボールを手にする清宮。春夏通算3度目の甲子園を目指す (c)朝日新聞社

 7月9日、西東京大会が始まった。昨夏、準々決勝で敗れた早実は、甲子園行きの切符を手にすることができるのか。

 東・西東京大会の開会式(7月8日)で選手宣誓を行った早稲田実業主将の清宮幸太郎は、故・小林麻央さんの最期の言葉から着想を得たという、

「野球を愛しています」

 の文言を宣誓文に入れた。

「好きよりも、愛しているのほうがより気持ちが伝わるじゃないですか。野球がなければ今の自分はない。愛していると同時に、野球に感謝もしています」

 無数の報道陣に囲まれても、彼は素直な感情を明快に言葉にする。飾ったり、狙ったりする言葉ではないから、言霊となって人々の心をとらえる。

 これは石川遼や福原愛など10代から活躍するスター選手に共通する大事な才能だろう。

●期待に応えたい

 翌日、灼熱の王貞治記念グラウンド。早実の練習が終わるのを待って、麻央さんの夫・市川海老蔵さんがブログで清宮の宣誓に対して感謝の言葉を綴り、大きなニュースになっていることを清宮に直接伝えた。

「まじすか。ほんとっすか。エー、へえ」

 若干戸惑いつつも、なんとも愛らしい表情になる。

「最近、『可愛いね』ってよく言われますよ(笑)」

 初戦に向けたコンディション同様、発する言葉も絶“口”調だ。

 早実の先輩である斎藤佑樹(北海道日本ハム)が巻き起こした“ハンカチフィーバー”は、田中将大(ヤンキース)の駒大苫小牧と、延長15回を戦い、再試合にまでもつれた甲子園決勝を制してからだ(この試合を甲子園で観戦したことで、清宮は野球を始めた)。清宮の場合、入学の前から大きな話題となり、衆人環視の中で高校生活、野球漬けの毎日を送ってきた。

「注目されることが、プレッシャーになるということはないですね。むしろ、期待に応えたいという気持ちがあるから、成長してこられたと思います」

●悔しさを晴らすため

 ここまでの2年半はあっという間だった。

「小さな頃、夏の甲子園が終わると、1年後がすごく遠いというか、待ち遠しいなという感じだった。高校に入って甲子園に出て、冬が終わったらすぐに春。春が終わればすぐに夏。なんだか寂しい気持ちもある」

次のページ