また、スタントマンに、独特のアクションとポーズをやってもらうことも、ハードルが高かったという。長寿番組となった要因は、ドラマパートでコメディー要素を入れるなどアメリカ側の制作スタッフの創意工夫があったことはもちろんだが、日本のスーパー戦隊がシリーズを通じてこだわり続けた演出を受け継いだことも大きい。

●時代劇から続く文化

 見せ場となる名乗りのポーズや必殺ポーズをはじめ、5人のヒーローが順序良くアクションを重ねる演出が日本と同様にアメリカの子どもたちの心をつかんだ。この戦隊流のアクションは、時代劇の演出をベースとする動きだという。

「日本のヒーローアクションというのは、格闘技でもない、体操でもない。どうすればヒーローをかっこよく見せることができるかをとことん追求したアクションです。間の取り方から顔の角度まで、怒った時はぐっとあごを引くとかね。独特の表現方法です。これは日本の時代劇から特撮ヒーローへ続く、長年培われた文化ですよ」

 こう話すのは、パワーレンジャーのテレビシリーズにスタント、監督、プロデューサーといった立場で15年以上関わった坂本浩一さんだ。

 だが、当時のアメリカは戦隊アクション未開の地。幼い頃から時代劇の見えや殺陣を観て親しんでいる日本人とは異なり、独特の表現方法を知らないアメリカ人のスタントマン(スーツアクター)は、見よう見まねでやってみても当初はうまくできなかったと語る。

「例えば、格闘技の経験者を呼ぶと蹴りがうまい人はいるし、パンチがすごい人もいる。でも、一瞬の力強さだけは表現できても、流れるようなアクションはできないんです」(坂本さん)

 日本でスタントマンとして活動していた坂本さんは高校を卒業すると、映画監督を目指して18歳で渡米。アメリカでもスタントマンの活動を続けているうちにパワーレンジャーの制作スタッフから声がかかった。

「スーパー戦隊のアクションの色が出せないから手伝ってほしいということでした。駐車場に行って、戦隊流のアクションを演じて見せました。日本では、週末は遊園地でヒーローショーのスーツアクターをやっていましたから、頑張りましたよ! ポーズをとったり、やられて倒れたりとか、一通りやったら、『まさにその動きがほしい』と」

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