パワーレンジャーのセカンドシーズンから参加し、早速、日本からスタントチームを呼んでスーツアクターに起用した。


「現地のスタントマンも一緒にやりました。指導を続けるうちにマスターする人も出てきました。徐々に戦隊流のアクションとはこういうものだという意識が芽生えたんだと思います」(坂本さん)

●全米に与えた影響

 パワーレンジャーに日本の戦隊流のアクションの種をまき、少しずつ芽吹いていく喜びを感じながら、思わぬ事態が起きて坂本さんを感動させる。

「アメリカの子どもたちが格闘技を習い始めるという現象が起こったんです。当時はクラスの男の子の半数以上が空手やテコンドーの道場に入門。理由を聞くとパワーレンジャーが好きだからって。それから20年以上経って、今アメリカの第一線で活躍しているスタントマンたちに、スタントを仕事にしたきっかけを聞くと、子どもの頃にパワーレンジャーを観て憧れだったと言われて、感激しました」

 パワーレンジャーは今、ヨーロッパ、中南米、アジアなど世界160以上の国と地域で放映される世界的なヒットコンテンツに成長した。今回の映画版は、ド派手なアクションやコンピューターグラフィックス(CG)など最新技術を駆使した映像が魅力のひとつ。ヒーローとなる5人の高校生たちの成長物語も見どころだ。超人的な能力を身につけても、簡単には変身できないことに気づいた5人は、家族や学校などそれぞれが抱える悩みや葛藤を乗り越えて、真のヒーローへと覚醒する。大人が観ても楽しめる作品だ。

 アメリカで大きく花開いたヒーロー戦隊。世界で成功した日本のコンテンツには、時代劇から続く日本独自の演出方法が生きている。

(ライター・内山賢一)

AERA 2017年7月24日号