今回の麻央さんの悲報を、複雑な思いで受け止めたのは、同世代のがん患者たちだろう。

 国立がん研究センターの2015年の発表によると、18歳未満の子どものいるがん患者は推計で年間約5万6千人に上る。平均年齢は男性が46.6歳、女性が43.7歳。子どもの総数は約8万7千人に上り、この約6割が0~12歳と、まだ親による庇護が必要な年齢だ。

●子への告知に悩む

 小島教授によると、親ががんなどの重篤な病気になった場合、症状や治療状況によっても異なるが、子どもに心理的な負担がかかることは少なくないという。

 子育て世代のがん患者が悩むのが、子どもに過度の負担を与えないように、どう病状を伝えるかだ。

 16年12月、子どもがいるがん患者向けSNS「キャンサーペアレンツ」が30~60代の会員133人に対して実施したアンケート回答でも目立ったのは、

「精神面に悪い影響を与えてしまわないか」「どんな反応を示すか」といった、我が子へのダメージを心配する声だ。

 キャンサーペアレンツを運営し、自身も胆管がんに罹患している西口洋平さん(37)も、当初は一人娘の倖(こう)さん(8)に自身の病状を伝えていなかった。

 西口さんは15年2月、35歳の時にがんが発覚。医師から告げられた病状は「ステージIV」、5年生存率は10%以下だった。転移が進み、手術による切除ができなかった。

 人材会社に勤めるバリバリの営業マンだった。現在は、勤務形態を週3日程度のアルバイトに変更し、週に1度、抗がん剤投与のため通院、半年に1度は入院して治療を続けている。

●9割「伝えてよかった」

 がん発覚当時、倖さんはまだ幼稚園年長の6歳。西口さんは病気を伝えていなかった。

「隠していたわけではないのですが、どう伝えていいのか分からなくて。病状も安定していたし、『今はいったん置いておこう』と思っていたんです」

 ただ、棚上げしていた西口さんの「告知問題」は、予想外の展開を迎える。昨夏、ワイドショーでタレントの梅宮辰夫さんががんの手術をしたというニュースを一緒に見ていた倖さんが、

次のページ