●企画・運営は生徒主体

 試験にしても、授業などで学んだ知識を駆使して、自分の主張をつくる形式で「自分の考えを表す力が養われた」という。

 国内大学に進む片岡さんは、様々なバックグラウンドを持つ人が集まるISAKで学びながら、自分の成長を実感した。

「多様性に対する寛容さや自分と周囲が違うことを楽しむ力がついた。こういう新しい学びを提供できるような場所づくりに興味を持った。やっと自分の興味分野が少しずつ見えてきた」

 米国の大学に進むことが決まっている金岡佑一郎さん(18)は、板書ばかりで自分の意見を自由に表現しづらい「閉鎖的かつ受動的だった」兵庫県宝塚市の公立中学校から同校に入学した。ISAKでは「何でも柔軟に挑戦させてくれる。高校生だからここまでしかできないとキャップをつけず、もっと上を目指さないのかと逆に質問されるような環境がある」という。

 同校では、企画から運営まで全てを生徒が主体的に行う課外活動をカリキュラムに組み込んでいる。金岡さんは15年4月のネパール地震を受け、ネパール人の生徒らと7人で「プロジェクト・ネパール」を立ち上げた。現地の人と連絡をとり、必要な物資の聞き取りなどをして、支援計画を作成し、クラウドファンディングや寄付金集めをして約700万円をつくった。これまでに仮設学校13棟、常設診療所1棟が建てられ、その功績はネパール政府にも表彰された。着服などがないように領収書のチェックも生徒たちでしている。

 金岡さんも「ISAKで多くの機会に恵まれて、逆に何をやりたいのか、良い意味で分からなくなった。大学でもっといろんなことを探求してから、最終的に進む方向性を決めたい。社会起業家として、何か世界にポジティブなインパクトを残したい」と意気込む。

 熱く語る2人の将来が頼もしく思えたが、代表理事はまだ満足しない。小林さんは言う。

「プロジェクト・ネパールのような企画がもっと立ち上がっていいし、人道支援だけではなく、ビジネスが立ち上がってもいい。新たな価値観を生み出すとか、新しい産業を提言するとか、壊せないとされてきた既成のものを壊していくとか。そういう企画が上がるような『気づき』の機会をどうやったら増やせるのか。生徒だけではなく、学校側にも改善の余地がある」

 まさに同校が目指すチェンジメーカーの姿そのものだ。そんな風景は筆者自身が経験した米国での中等教育も思い出させた。

(編集部・山本大輔)

AERA 2017年6月5日