●「自分に問いかけて」

 変革の時代にあって、新しい価値観、新しい分野を切り開くことができるリーダーを育てたいという強い思いがある。日本人や外国人などの区別なく、奨学金を積極的に出し、世界中から優秀な生徒を受け入れている。昨年10月には、世界の高校生を受け入れて国際感覚豊かな人材養成を目的とする国際教育機関「ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)」の加盟校に認定された。今年8月には校名が「UWC ISAK Japan」に変わる。

 同校では重視していることが三つあるという。「問いを立てる力」「多様性を活かす力」「困難に挑む力」だ。

 小林さんが説明する。

「何が好きで、何をやれば効果的なのか。まずは自分に問いかけ、向き合ってほしい。それが隣の人は何を望んでいるのかなど他人に対する問いにもつながる。また、自分の『当たり前』が、そうではない人と対峙した時、攻撃や排除ではなく、多様性を理解して受け入れ、落としどころを探していく人になってもらいたい。そして、必ず待ち受ける困難に打たれ強くあってほしい」

 この三つは「人間にしかできない」として、IT時代でも必要な能力だと強調する。

「コンピューターは学習が得意だけど、人間の特性は学習して新しいものを生み出すこと。コンピューターは前例のないことは学習できない」

 ではこうした理念の下、どんな教育が行われているのだろうか。卒業間近の1期生の日本人生徒2人に直接聞いてみた。

 小中ともに神戸市内の公立学校に通っていた片岡陽(みなみ)さん(18)は、「試験に向けた暗記の繰り返しの勉強」では得られない経験をしたいと思い、ISAKへの進学を決めた。全寮制で24時間英語漬けの生活に最初の数カ月は本当にしんどかったというが、今では英語で書く、聞く、話すことに抵抗はないという。

 当然、あらゆる面で日本の公立校とは違った。授業では、意見を述べることを求められる。例えば歴史の授業。いろんな国から来ている生徒たちが語る歴史は、教科書で知っている知識とは全然違う。片岡さんは言う。

「立場が違うと見方も変わることが面白くもあり、怖くもあった。日本の中だけにいたら気づけなかったと思う」

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