「IT」領域を選んだ2年生の教室をのぞいてみた。情報工学の専門家で都立高の教諭としては珍しく博士号を持つ西野洋介教諭が呼びかける。

「夏休み前にテーマを決めてください。秋からは特許のコンテストや、科学コンテストの全国大会もありますから。(ソフトバンクの)ペッパー君も学校で2台購入したので多摩科技の中を案内するプログラムを作るとかもありです。現時点で、みんなどんなテーマを考えてる?」

 生徒が出してきたのは「AIを使った音声制御」「2次元の画像を3次元の立体にする」など。最先端技術への高い関心がうかがえる。

「作って終わりにならないように常に『誰のどんな課題を解決するための研究か』を意識するように言っています。最近は生徒たちがニュースに関心を持つようになりました」(西野教諭)

●夢はホワイトハッカー

 同校には、生徒の関心を社会に向けさせる多様な仕掛けがある。東京農工大学など連携している大学の研究者や企業の技術者がアドバイザーとして行う、自動運転など最先端の研究についての特別講義もその一つ。積極的な生徒は大学の研究室のメンバーの一員として活動することもある。

 高校生から本格的な研究ができる点に魅力を感じて同校を選んだという笹川珠希さんは現在3年生。部活動でも「科学研究部」に所属し、数々のコンテストに出場してきた。今夏にSSH指定校の生徒が全国から集まり、成果を競い合う「SSH生徒研究発表会」で、昨年審査委員長賞に輝いた先輩たちに続いて上位入賞を狙う。

「来年、九州大学に新設される『共創学部』にAO入試で入って、環境の研究をしたい」

 冒頭でプレゼンをした坂本さんが将来目指すのは、善良な目的に技術を生かすホワイトハッカー。猪又副校長は言う。

「AI時代はまさに我が校の生徒にとってはチャンス到来です」(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年6月5日号