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武闘派も静まる“なでしこ”仲裁 タイ紛争地で日本女性が奮闘

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by 山本大輔 (更新 )

タイ深南部で2016年5月、政治的解決を促す研修を開いた堀場明子さん。武装勢力が暮らす集落の女性住民からも話を聞いた(写真:堀場明子さん提供)

タイ深南部で2016年5月、政治的解決を促す研修を開いた堀場明子さん。武装勢力が暮らす集落の女性住民からも話を聞いた(写真:堀場明子さん提供)

2009年7月、タイ・パタニ県内の道路に仕掛けられた爆弾で大破した警察車両を調べる武装警官。テロは今も日常的に起きている(撮影/編集部・山本大輔)

2009年7月、タイ・パタニ県内の道路に仕掛けられた爆弾で大破した警察車両を調べる武装警官。テロは今も日常的に起きている(撮影/編集部・山本大輔)

タイ深南部問題(AERA 2017年5月22日号より)

タイ深南部問題(AERA 2017年5月22日号より)

 分離・独立紛争が続くタイ深南部で紛争を仲裁する日本人女性がいる。日本人らしさで信頼を構築し、平和へ導こうとしている。

 幹線道路はタイの警察車両で封鎖されていた。道路脇には土嚢で固めた大きなテントが設置され、複数の武装警官が待機する。その横をタイ陸軍の装甲車が通過していく。2007年12月、筆者が初めてタイ深南部と呼ばれるマレーシア国境の紛争地帯を取材した時の光景だ。車を降りると、自動小銃を構えた警官に囲まれた。

「どこに行くのか。目的は何だ。危険だから用が済んだらすぐに立ち去れ」

 行く先々で検問にあいながら、同じ警告を受ける。理由は集落に入るとすぐに分かった。放火された建物、爆発で大破した車、窓ガラスに残る複数の弾痕。頻発するテロの爪痕が、あちこちに残されていたのだ。

●「宗教的な中立」生かす

 バンコクから南に約1千キロ超、タイ深南部とは、パタニ、ヤラー、ナラティワートの3県全県とソンクラー県の一部が入る地域を指す。人口約200万人の約8割が、自身を「パタニ・マレー」と呼び、マレー語を話すイスラム教徒だ。大きな街は少なく、広大なジャングルの中に点在する集落に、仏教国タイからの分離・独立を掲げる武装勢力が潜伏しているとされるが、拠点基地などはなく、普段は村民として暮らすゲリラなので姿は見えない。タイ政府も全容の把握に苦しんできた地域だ。その実態が今、次第に明らかになってきた。

 一帯の武装組織は大きく分けて4組織あり、それぞれがバラバラ。末端の人たちは、誰が仲間なのか互いに知らない。把握しているのは一部の指導者たちだけ。その多くは亡命先のマレーシアやドイツ、スウェーデンから精神的、金銭的支援などをしている──。

 こうした実態が分かり始めたのにはワケがある。一人の日本人女性、笹川平和財団の堀場明子さん(39)の存在だ。前述した内容は、いずれもタイ政府と武装勢力の和平対話を仲裁して双方と人脈を築き、多くの当事者から話を聞いた成果の一部。堀場さんとは一体どんな人物か。


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