で、「パパ!」「起きてよ!」ってみんなで必死に願うじゃない。心電図のモニターの波がツーツー、ツーーーって消えそうになると。でもって、そうすると何か聞こえるらしくて、ツーツーってまた波が戻るんですって。「あぁ良かった」ってホッとして。で、またツーーーってなると、「パパー!」「生きてぇ!」ってなる。ところが、「パパー!」って何回も繰り返しているうちに、だんだんみんなくたびれてきちゃったのね。で、何度目かにまたツーーーってなったときに、娘さんが「パパ!生きるのか、死ぬのか。どっちかにして!」って。

 爆笑だったわね。死をテーマにした会場中が。でもわかるわよね、この気持ち? さらにこの話は続きがあって、そのあと火葬場で待つじゃない。お骨になるまで。部屋で待っていると、1時間くらいして係の人が報告にきた。そうしたらその娘さん、「みなさーん、いまパパが焼き上がりました」って。

 面白いわよねぇ、世の中って。「老後がどう」「死はどう」って、頭の中でこねくりまわす世界よりもはるかに大きくて。予想外の連続よね。楽しむのではなくて、面白がることよ。楽しむというのは客観的でしょう。中に入って面白がるの。面白がらなきゃ、やってけないもの、この世の中。

 で、なに? 仕事で一番好きな瞬間はどんなときかって? ギャラの交渉をしているときよ。「えー、あ……」って。女優本人に直接金額を言わないといけないもんだから、みんな困っちゃうの。面白いわよぉ(笑)。

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2017年5月15日号より抜粋