中央大学文学部卒業後、男女雇用機会均等法の第一世代として1987年に入社。以来輸入食肉に関わってきた。入社2年目にして早くも部署内で最年長の女性社員に。「当時は自分自身もここまで仕事を続けるとは思わなかった」と言う。そういう時代だったのだ。91年、牛肉の輸入自由化後は海外拠点が増え、業務の幅が広がった。ほどなくニュージーランドにアンズコフーズとの合弁でフィードロット(牛の穀物肥育場)を設立。日本側の窓口業務を担うようになった。

 仕事は面白かったが、それだけに見えない天井の存在も感じた。30代に入ったころだ。このままでいいのだろうか――。悩んだ末、会社を辞めるつもりで米国公認会計士の勉強を始めた。帰宅後、寝る間を惜しんで問題演習に励む日々。社内で女性活躍推進委員に命じられたのはそんなときだった。

「2年間、支援制度の整備などの改革に取り組み、私たちにも管理職の道が開けた。結果として会計士の道は諦めることになったけれど、そこで得た知識は今も業務に役立っています」

 柔らかな語り口。決して“バリバリ“というタイプではない。だが、海外業務で困ったら「まず杉山に相談」と言われるほど頼もしい存在だ。彼女をよく知る社員は言う。
「彼女は奥ゆかしいパイオニアなんです」

(文中敬称略)

(ライター・安楽由紀子 写真・門間新弥)

AERA 2017年1月30号