もっとも、東京選挙区では知名度抜群の元長野県知事、田中康夫氏が落選。高木氏は知名度も低く出馬表明もギリギリだったのに、浅田氏と遜色ない約67万票を取った。橋下氏の引退の影響が、東京ではあったかもしれないが、大阪ではほとんど見られなかった。

「選挙の種類を問わず、維新の候補者は自身の主張よりも、議員定数削減など維新の政策をアピールする傾向が強いと思います。維新にくら替えした議員は、そのままでは再選する可能性が低いことを実証した論文があるのですが、維新の候補者が『所属政党』をアピールする背景にはそのような事情があるのでしょう。結果として維新支持者は維新であれば『誰でもよい』という傾向を強くします。だから市議選などで、維新が擁立した新人候補がトップ当選するような現象が生じるのです」(善教氏)

●大阪ナショナリズム

 政権交代をめざしたころの民主党と同じようにも見えるが、実態は違うようだ。

「地盤沈下が叫ばれて久しい大阪に活気を取り戻し、東京に匹敵する『大阪』へという思いを具現化する方法の一つは、行政区域を超える政治主体としての政党を機能させること。しかし大阪市民は、自民党などに対して、市域を超える利益の代表者になれるという確信を持てないのでしょう。でなければ、橋下氏がしきりに維新でなければ市と府の調整が困難などと主張していたことを説明できない。維新は市と府をつなぐ唯一の政党であり、それゆえ市域を超えた『大阪』を代表されると認識される。そこにあるのは、ポピュリストに踊らされた熱狂的支持などでは決してないのです」(同)

 その一方、大阪で独自のナショナリズムを形成してきたメディアと維新の関わりが深いのも、また事実だ。

「アンチ東京」を公言して関西で絶大な人気を誇り、橋下氏の政界入りも後押ししたタレントのやしきたかじん氏(14年に64歳で死去)。彼が長く司会を務めた「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ、現そこまで言って委員会NP)がそれである。

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