加えて弁護士1人と公認会計士が2人。古田佑紀氏は検察官出身で05年から12年まで最高裁判事を務めた。会計士の佐藤良二氏は監査法人トーマツでCEO(包括代表)を務めた人物。野田晃子氏は中央青山監査法人の代表社員だった会計士で、証券取引等監視委員会の委員も務めた。いずれも名だたる経営者、専門家たちである。

 そんな大物たちはS&Wについて、一体どんな説明を受け、何を質し、WHによる買収を承認したのか。その年の12月に買収を完了するが、巨額の損失が発生する可能性をまったく考えずに承認していたのか。

 1年後の16年12月に巨額損失の可能性を知らされると、取締役会は大騒ぎになったという。社長の綱川氏ですら12月中旬に初めて報告を受けたようだ。

 WHがS&Wを買収しなければ、原発建設の遅れに伴うコスト増は発注電力側の負担になっていた、という指摘も東芝社内にある。つまり、巨額損失を抱えたS&WをわざわざWHが買収する理由とは何だったのか。

●「親会社保証」という罠

 問題が東芝にとって深刻なのは、WHが抱えることになった巨額損失を、いつの間にか東芝が背負う事態となったことだ。WHを切り離して“損切り”することができないのである。

 14日の発表資料の中にWHに対する「親会社保証」という資料がある。16年3月末の「偶発債務及び保証類似行為」が7934億円とあり、米原発工事に関わる「客先に対する支払保証が90%弱」を占めるとする。さらに「支払保証の概要」として「(WHの)客先への支払義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合」、東芝がWHの「親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」とある。

 本来は東芝を立て直すために社外取締役になったはずの経営の専門家たちは、結果的に東芝を“アリ地獄”にハメる役割を担ってしまったことになる。(ジャーナリスト・磯山友幸)

AERA 2017年2月27日号