「この役にはエヴァがぴったりだと思ったんだ。美しいばかりではなく、神秘が漂うあたりがいい。往年の映画スターのような謎めいたところがあるし、誰もが彼女のことを知っているかのようで、実はよくは知らない。そんな点が気に入っている。奇妙な子どもたちは、彼女のそういうところにコネクトできる。鳥のハヤブサに変身できるあたりも面白くて、彼女にはそんなクオリティーがあるんだ」

●子どもには理解できる

 バートン映画にはたびたび、「変わった」「奇妙な」と形容されるキャラクターが登場する。物語はいつも、おとぎ話のようでありホラーのようでもある。そんな作品を生む自らを、

「映画以前の時代、おとぎ話というものがあった。モンスターが子どもを食べたりして多くは恐ろしく、時にグロテスクでさえあった。そのおとぎ話の世界を、子どもたちは理解できる。大人なら論理的に理解不能なこともね。僕自身、モンスター映画を見て育ったが、現実的ではない物語も時には現実に思えた。人の心理や人生を理解するうえで、役に立ったと思う」

 と分析する。自身はどんな子どもだったのだろうか。

「子どもの頃の僕は、老人の状態で生まれて年を取るごとに若返るブラッド・ピット主演の映画『ベンジャミン・バトン』みたいだった。当時からいまみたいな感じで友だちに話しかけていたんだ。80歳のような気持ちだった。今朝だよ、やっと13歳になったような気持ちになったのは(笑)」

(ライター・高野裕子)

AERA 2017年2月6日号