「議会事務局は議員と直接やりとりできるので、こういう問題についても直接やりとりすればいい。もしくは、議運(議会運営委員会)でルールを話し合ってもらえばいいと思います」

 この「議運」がくせものだ。都議会のルールでは少数会派はオブザーバーとしてしか参加できず、議決権はない。幽霊のような存在で、いないことになっている。

●議会事務局も答弁

 本誌は東京都を除く46道府県と20政令指定市の議会事務局に、「議会事務局の予算(広報活動、議員の視察費など)執行やその他の事務作業について、本会議や各種委員会で議員から質問があった場合、議会事務局から回答するか」と尋ねた。「回答しない」と答えたのは青森県、岡山県の2自治体のみで、45自治体が「原則回答する」と答えた。「委員会で県議会の広報について回答した」(新潟県)、「議会事務局長または総務課長が執行機関の立場から答弁をする場合も考えられる」(京都府)との回答もあった。

 前出の中村氏は「地方自治は首長と議会の二元代表制で、議会は首長が率いる首長部局をチェックするのが仕事。議会事務局は議員側の組織だから、議員が議会で事務局に質問をするのは原則ありえない」と説明する。仲間を募り、議運に人を出せるだけの会派を作ることも含めて政治家の仕事、という理屈だ。とはいえ、「いじめ」のような構図が長年放置されていることは、都議会に改革マインドがないということではないか。

 早大マニフェスト研が全国の都道府県、市区町村議会を対象にした調査によれば、15年度の「議会改革度ランキング」で、47都道府県のうち、東京都は35位。政務活動費の収支報告書や、各政策分野ごとに開かれている常任委員会の動画のネット公開などが行われておらず、議会が都民から直接意見を聞く場も設けていない。都議会の本会議は議員が複数の質問をずらずらっと並べ、それが終わると執行機関が回答をまとめて答弁する仕組み。先進的な改革を進める鳥取県や兵庫県、大阪府の各議会のような、一問一答式の質疑にわかりやすさで遠く及ばない。

 地方議会では06年以降、住民と議会、首長と議会の関係を定義し、議会の活動原則を定める議会基本条例が広がった。早大マニフェスト研の調べでは現在、調査に回答した1414自治体の46%、都道府県議会では30議会が制定し、2議会が検討中だ。都議会ではいまだに制定されていない。

●読まれる議会広報へ

 中村氏はそもそも、都議会だよりの「実効性」をチェックするべきではないかという。年間1億2300万円(16年度)をかけ、毎回360万部も配布されているが、本当に都民が興味をもって読むような作りになっているか。議会への注目度が下がれば、住民からのチェック機能も落ちる。だから、こういった問題が放置されてしまう。

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