●トランプ氏への対抗心

 オバマ氏は、トランプ氏が大統領選挙で当選した直後、ホワイトハウスに招待し、政権移行を速やかに進める支援を惜しまないことを表明した。また、ホワイトハウス職員に対しても、支援を訴えるメッセージを送っていた。

 しかし、トランプ氏との会談後、撮影用に握手した際、オバマ氏は、口を真一文字にし、緊張に満ちていた。トランプ氏は、優位性を見せるため、オバマ氏の手を上から握ろうとして、右手を被せかけた。オバマ氏は、それを阻止するため、自分も上から手を被せ、握手の間、トランプ氏を見もしなかった。

 オバマ氏がトランプ氏への「対抗心」をあらわにした瞬間でもあった。

 その後も表向きには「政権移行を支援」としながらも、オバマ大統領は次々に「反トランプ」の施策を打ち出している。環境問題に配慮して石油掘削権販売禁止の法律を検討しているのもその一環だ。

 オバマ氏が、真珠湾と安倍首相、さらには日米関係を巻き込んで、「平和」と「和解」を訴えたことは、トランプ氏に侵されない「レガシー(遺産)」作りととらえて間違いない。真珠湾の合同訪問は、「オバマの世界」のクライマックスでもあり、終幕でもある。(ジャーナリスト・津山恵子)

AERA 2017年1月16日号